いつも通り部活に出て帰ろうと支度をし始めると、教室の端でがたんと椅子や机にぶつかるような音が響いて、一瞬遅れていたいと言う声が聞こえた。誰がどうなったか大体想像がついたため顔は向けずに支度を進める。最近は殊に寒いためコートを着ている。ロッカーに適当に置いておいたが変に跡がついていないかと今更ながらに心配になった。母はこういった細かいところに意外とこだわるたちなのだ。

いたいと再び聞こえ、そういえばまだ机の整然とした並びを壊した人物がそれを直すなりなんなりする音を聞いていないことに気づいた。さすがにどうしたのかと呟きの聞こえた方に目を遣ると、ぎゅうと左膝あたりを抱えて座り込む吹雪が目に入った。

「どうした」
「いたい」
「なんで」
「知らない」

それ以上話そうとも動こうともしない。自分は大丈夫なのかと聞くことしか出来ないのに、まるで拒否するかのように抱えた膝に顔を埋める。再度痛いと呟いた吹雪の声が二人しかいない教室に響いた。あまりにむっつりと黙り込むものだから、機嫌でも悪いのかと覗き込んだ顔は真っ青で、よく見れば抱えた膝と腕は小刻みに震えていた。



いまこいつがただ痛くて震えているのか情緒不安定なのか、俺にはとうていわかることではない。分かるほど今まで気にして来なかったし、これからも気にする気はない。この場で俺に分かったのは、こいつが俺を拒否したのではないという事実だけである。





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あんまり興味ナッシングな冷めた豪炎寺さん
吹雪の補足はまたあとで。



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