疲れた表情そのままに吹雪がふと空を見上げてため息をついた。横から見るその目は虚で、もとの色と相まって何も映していないように見えた。ああ糸だ、と思った。
「暇じゃないの」
「何が」
「さっきからこっち見てるから」
「暇」
そう、と言ったきり吹雪は喋らなくなり、また俺はその横顔を眺めるだけになった。傾いた太陽が橙に辺りを染め始めていた。吹雪は空を見つめたまま動かない。俺もそれに倣う。

星がちらちらと見え、首も痛くなってきた。隣を見ると吹雪は目を閉じていた。糸は見えない。
「帰るか」

投げ出した足の上で組まれた吹雪の手を掴むと冷たかった。なんだ、やはり寒かったのではないかと軽く手の甲を抓ってやったが、きっと感覚など無いのだろう、静かに目を開いただけだった。糸が空にのびる。今日はなんだか寂しい日だね、呟いたきり動こうとしない。糸はのびる。


結局夕食の時間に間に合わなかった。携帯に何度か着信があったが出る気にならなかった。諦めたように止む着信を知らせるバイブレーションに少しの申し訳なさを抱きながら隣を見れば、寒いと時折呟きながらもそこに居つづける馬鹿が居る。腹が減ったと愚痴ると君だけ帰ればいいのにと言う。もっともである。糸は太りほの白い筋を空中にゆらゆら漂わせた。そろそろ引き上げ時である。吹雪は目を閉じて大きなため息をつくと立ち上がり、一言帰るとだけ言った。

「あーあ、幸せ逃げちゃった」


夕食はハンバーグだったそうだ。









意味ない



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