吹雪 事故直後妄想
どちらが生きていたのか、確率は半々









わあ、びっくりした、真っ白だ、あつやはどこかな。


目を覚ましたら真っ白だった。何がなんだか、ぼうとほうけていると少しずつ自分が最後に見たものが蘇ってきて、あ、あれは雪崩なんだとぽんと心に事実だけが落っこちてきた。と同時に言いようの無い気持ち悪さが背中からぞくぞくとはい上がって胸を鷲づかんだ。雪崩だ、雪崩だ雪崩だ!

ヒ、ヒと息を吸い込んで、吐き出せない。目の前がチカチカして頭が朦朧として、苦しいはずなのに苦しくない。周りを白い服を着た大人が動き回る。口々になにか言っているけれど自分の呼吸音が煩くて聞こえない。怖い、怖いと途切れ途切れに発する。とうさん、かあちゃん、あにき、しろいよ、しろい、よ。


「敦也、苦しい?」
あにき、どこにいんだよあにき、「ねえ苦しい?」
うん、うん、すごく苦しい、たすけてよあにき、苦しい、「そう」

「苦しくてよかったね、息ができてよかったね、ね、敦也、苦しいのはやだよね、すっごくやだよね、お前結構痛がりだもんね、なあ敦也、僕が代わってあげようか、うんそれがいい、そしたらお前は苦しくなくなるよ、痛くなくなるまでゆっくり寝てなよ、なあ敦也、代わってやるよ」
そう言って俺の頭を掴んだ兄貴の目は、俺に似た橙色に染まって、ただただ憎らしそうに形を歪めていた。



「ああ敦也君、目が覚めたのね!待っててね、今看護師さんを呼ぶから」
「…大丈夫」
「だめよ、もしものことを考えなきゃ、何かあったら、」
「本当に、大丈夫なんだけど」
僕はまだ生きてるんだもん。小さく呟いて笑うと親戚のおばさんは何か言ったかと首を傾げた。

おやすみ敦也。











成り代われば、問題無い

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