悪寒と冷や汗が止まらない私を他所に、彼はとても愉しそうに私の胸のボタンを手際よく外す。


「ちょ...ま、待って...」

「残念だけど待てないな」


そう言って私の胸元に下を這わせると、サトルさんは丹念に突起を嬲る。
快感と恥辱で頭が朦朧としてきた頃、後ろから内部へ侵入しようと大きな手が下着の中に潜り込んできた。
振り払おうにも力が違いすぎて話にならない。


一所懸命な私とは裏腹、余裕の笑みと共に強引にキスを奪うと、彼は容易く私の内壁を押し上げて指を潜り込ませた。


「ひ...ぁ!」


夜の静まり返ったリビングに甘い悲鳴が響く。
急いで口を押さえたが、指の動きは早くなるばかりだ。
涙目になりながら声を押し殺していると、サトルさんはにこやかに笑んで私の中で動く指数を増やした。


「サ、トルさ...!」

「本当はケーキも莢花を気持ち良くさせる道具に使いたいんだけど、そんなことしたら呪われそうだからお預けかな」


そもそもメグルくんの聖域(?)でこんなことをしている方が呪われそうですが。とでも言ってやりたいが、全くそれどころではない。
それどころか次第に激しくなっていく指の動きに何も考えられなくなり、私はサトルさんに全てを委ねた。


「は…ぁっ」


ずるずるとその場に倒れ込んでしまいそうな私を受け止めると、サトルさんは急に指を引き抜いて私をお姫様のように軽々と抱える。


「部屋...行くの面倒だな。
ここでいいか」


私を抱えたままキッチンから少し移動すると、彼は力の抜けた私を労るように優しくリビングのソファーへと下ろした。

私の顔にかかる髪を撫でるようにはらうと、サトルさんは啄むようにキスを落とす。


「そういう目をするから...止まらなくなるんだよ」


まだ少しチョコレートの甘い香り漂うリビングに、口から溢れる荒い息と吸い付いては離れる唇の音が響き渡る。
掠れた喘ぎを洩らす私に満足そうな笑みを浮かべたサトルさんは、耳元に唇を近づけて耳打ちをした。


「ソファー、汚さないようにヤらないとね」


カケルさん怖いから、とにっこり笑う彼を私はただ呆然と見つめていた。

黒いレザーのソファーが軋む音と同時に、サトルさんの体温が私に重なる。
気がつけば彼は、甘くて溶けそうなくらい熱いキスを私の唇や躯に押し当てていた。
躯には電流が走り、その甘すぎる口付けに身も心も焦がされてしまう。
たくさんのキスに頭をクラクラさせながら、声に出してしまいそうな甘美を押し殺す。


「…っ、ね…もう…っ」


もどかしい愛撫ばかりに私は身をよじる。
先程から肝心な所には手を付けてはくれないのに、唇や胸の突起には赤く熟れる程キスを落として濡らす。
初めに弄くり回された内壁がその先を求めて快楽を欲しがった。


「サト……ル、さんっ…」

「まだダメ」


足りない愛撫を埋めてほしいと、躯が疼く。
それでも、彼は何もしてくれなかった。


「そんな…ぁ…っ」

「折角だから、愉しみは長引かさせて…」


悪戯っぽく笑いながら耳元で囁く。
こう焦らされてばかりいると少しの愛撫で躯が疼き、最初は我慢していた声も制御を失って口から甘く解き放たれる。


「…っ、ん…あぁ!」


喘ぎっぱなしの喉が、だんだんと渇く。
最初は恥ずかしかった自分の甘い声に、酔ってしまいそうだ。


「莢花、少し黙って」


そう言って私の太股に指を這わせ、秘部に潜り込ませた。
咎めるけれど、言ってることとやってることが違いすぎる。
睨み付けても、可愛いとあしらわれるだけで何の効果もなかった。

サトルさんは潜り込ませた二本の指で壁を押し開くようにしながら、ゆっくりと何度も行き来させた。


「あ…、やぁ…んっ」


恥ずかしさで顔を両腕で覆いながら頭を振る私の耳元に、彼は甘くキスをする。


「そんな可愛い声、俺以外の前では絶対聞かせないように」


まるで子供を叱るように窘めると、サトルさんはしつこいくらいのキスで私の唇を嬲った。
耳元で意地悪く囁く声は普段の声よりもすごくセクシーで、掠れながら吐き捨てる台詞は、私を惑わすタチの悪い媚薬だ。


「サトルさん…っ」


我慢なんてとうに限界を超えている躯を早く解放して欲しくて、私は涙を流しながらねだる。


「……しょうがないな」


"もう少し愉しみたかったけど…"。
そう言って甘く揺らめく瞳を細めると、サトルさんは指を抜いて一気に私の中に攻め入って来た。


「あぁぁっ!」


待ち望んでいた快感に甘い悲鳴を上げながら、私は必死で彼にしがみつく。
最奥を何度も激しく突かれて、自然と躯がのけ反った。


「も…や、ぁあっ…」

「…っ」





頭が真っ白になって躯から力が抜け、息を大きく吐き出す。
サトルさんは私の乱れた前髪を直しながら、そっと唇を寄せた。


「続きは部屋でする?」


なんという体力だ...と思いながら、肩で呼吸することしか出来ない私を優しく抱き寄せる。
口付けで私の涙を拭いながら、彼は面白そうに微笑んだ。

"ほんとに体力ないね"と吐き捨てる声は、蕩けてしまうほどに甘い。
呼吸の整わない私の背中を撫でながら、
サトルさんは小さく呟いた。


「でも、少しこのまま…」


そう言って大事なものを扱うように、彼は私を包む。
困ったように微笑むその笑顔が、私の心を愛しさで締め付けた。



「愛してるよ…莢花」



何度聞かされた愛の言葉も

髪を撫でる大きな手も

ゆっくりと重なる柔らかな唇も

私の心を焦がして止まない。


あなたは甘くて愛しい悪魔様。





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