4.5
高校時代からよく試合を見てくれてる人がいた。
気づいたのは割と最初の頃、2年のIHでは確実に認識していた。
23になる年にやっと彼女の名前を知った。

「にしても、臣くんが俺の彼女の言いつけとはいえホテルまで送ってくなんて槍でも降るんちゃうか」
「はぁ?別に遅かったし通り道だっただけ」
「いや、逆方向…いで」
「さっさと支度しろ」

帰り支度のため、がちゃんとロッカーの扉を閉め、ぶつくさと物を言う宮をはたき、彼女からもらったタオルを持って練習場に入る。
いつもファンから貰うものは極力受け取るのに困っており、昔から知ってると言う人は何も持って来ず、俺に一言つたえて去っていくことが通例で選手になってからは流石にサインを求められたりもしたがそれも最初だけであった。しかし彼女…なまえさんはその大きなカバンにいつも色紙を入れててにぐっと力を入れると笑って、少し恥ずかしそうにおつかれ様、と始まりその日の自分でもよかったと思うところを的確に俺に伝え、じゃあまた。と言っていつも去っていく。
皆に塩対応だと言われるからか、はたまたそれが有名なのかは知らないが宮のような列は俺にはできないため、そそくさといつも体育館を後にすることも多いが一応気にかけてなまえさんが来るまでは大体体育館にいるつもりだ。

「臣くん、なんか調子ええなぁ、ええことでもあったんかぁ?」
「ッチ」
「舌打ちすることなんてないやろ!?」

実際確かに調子がいい。彼女のおかげかと聞かれたらまぁそうかもしれないと答えるかもしれない。
実際ほかのやつらより気にかけているのは事実で彼女がSNSをみているとわかった時にそれなりに投稿もしている。
贔屓だと言われようとも気にかけているため事実だし、否定はしない。
現に宮になまえさんのことだと仄めかされてもきっぱりと否定はしていないのが証拠である。

さぁ、帰ろうと思いケータイを手にすれば気まぐれで返事をしたSNSに新しく返事が来ていた。

「っふ」
「っえ!?臣くん今笑った?!」
「なになに?オミオミだって人だよ笑うよツムツム!」
「いやそうちゃうくて!」

うるさく騒ぎ出す後ろの同僚たちを捨て置き
『また、試合行きますね。先日は、ありがとうございます。お話できてうれしかったです。』
と来た返事にさて、なんて返そうか。
ケータイの通知でしか内容を見ていないから既読印はまだついてないはず。
明日の朝返事をするのも一つの手だ。

「じゃ、お疲れ様です」

「あーー!!にげおった!」

喧騒を響かせる同僚たちをそのまま更衣室に置き去りにし、帰宅する。

東京にいればもうすこし会えて話すことも容易かっただろうに。
そう考えてもやっとする。
そのモヤモヤに気づかないふりをして帰路についた。




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