01

あの人を見たのは高2の時。
女友達が春高に出るからと応援に行ったとき、たまたま男子の試合を見て交代で入って颯爽と得点を取って行った時、それが佐久早くんを初めて見つけた瞬間だった。
とても綺麗な人だと思ったのだ。

「ねぇ、あの人美愛あの人だれ…?」
「ん?あ、あれ井闥山の佐久早じゃん?1年なのに試合出たんだ…」


すごぉ、という友人の声と共に再び鳴る地面にボールがぶつかる音、わぁと上がる歓声と拍手。
また、この人が出る試合が見たい。
最初は本当にそれだけだった。
よく年のIHに春高、大学に佐久早くんが行ってからは黒鷲旗なんて見に行って。
彼が高校3年生の頃にはこんにちは。なんて話せるくらいにはなった。

「なまえちゃーん!おはよう!」
「あ、おはよう。なまえ2ちゃん」

社会人になって、彼がMSBYに所属すればそのチームの応援へ東へ西へと見に行った。
佐久早さんがMSBYに所属したその年、リーグ中に宮侑選手がファンに後悔告白をした。
告白された子は界隈でも有名な宮選手のファンだった。
そんな風になれることがわたしにはどうしょうもなく憧れて、嫉妬した。
少し小さくて、ピンクブラウンの髪がよく似合う女の子だった。
初めて会った時もすごく芯が通っているいい人だった。
彼女のおかげでわたしは佐久早さんにサインが貰えたと言っても過言ではない。

「早く下行こ!列できちゃう!」
「あれ、萌絵果さんは」
「もういったー!」

はなしてみたらとても元気があって気さくな子。私とは真逆のところに位置する子。

「じゃあ、侑さんのところ行ってくるね」
「あ、うん。わたしも佐久早さんに会ってくる。」

がんばれー!なんて大きい声で私に伝えてくるなまえ2ちゃんはもうすでに宮選手が捕まえてMSBY恒例の大騒ぎが始まっている。

「またやってんの、アレ」
「あ、佐久早さん。こんにちは」
「よぉ。で、言ってたやつ持ってきたの?」
「!」

少し前に約束した手作り。覚えててくれたのだと嬉しくなる。一応持ってきたし、でも忘れてたらなんて考えてカバンに詰めた。

「手、手が汚れないようにマフィンにしました…」
「後で食う」
「…はい!」
「まぁ、感謝はしてる」


「臣くーん!感謝どころじゃないやろ!嬉しすぎて泣いてまうやろ!」
「うるせぇ。戻る。またな」
「今日も、かっこよかったです。また、次も応援してます。」
「ありがとう」

じゃ、と言ってそのまま体育館を去ろうとする佐久早さんに侑さんが突っかかる。
なまえ2さんもこちらに来てあとは萌絵果ちゃんを待つだけ。

私のファン生活はとても充実しているのである。



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