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それは、昨日のことである。
いつも通り名前さんと電話をして、今日は俺の試験前の勉強に付き合ってもらった。
ガチャリとノック音もなく電話をするからと部屋から追い出した侑が戻ってきた。

「あ、すみません、ツムのやつ帰ってきおった」
『ううん、なんかいつも電話付き合わせちゃってごめんね』
「ちゃいます!俺が好きやからやっとるんで、名前さんは気にせんでください!」
『なにが?』
「…え、あの、あれです!この時間が好きやからー的な!」
『あ、そういうことかぁ、じゃあまたね、おやすみ』
「はい、おやすみなさい」

そのまま電話終了の通知音が鳴った。勿論何も言わずに部屋に入ってきたツムにはブチギレた。同室といえどそこは弁えろと伝えたらむしろお前、毎日毎日電話して進展もないんやからお前が弁えろとキレられた。
ツムが言っていることも勿論わかるし、俺もうじうじグダグダとこの関係を繋いでいるからツムの言ってることもわかる。

「で、何?」
「俺はどうしたらえぇんや…」
「告れば?」
「急にハードル高ないか!?」

わかりやすく呆れる角名がもうさっさと告白しまえと煽ってくる。
このことを知っているのはバレー部だけで、他の生徒は知らないから未だに続く告白劇、正直今ちゃんと俺には好きな人おるからと告白の返事を返すのが辛い。
好きな人に告白する勇気なんぞ俺には持ち合わせがないからだ。

「ハードルが高いって言ったって、侑も言ってるけどじゃあどうすんのさ。高校も東京と兵庫で卒業後の学校も知らない。」

グサグサと角名からの言葉が自身に刺さる。
ラインのトーク画面をひらけばピンで一番上に固定されている好きな人の名前。
何日かに一度は届く梟谷のエース、木兎をなだめるセッターの赤葦の写真。
聞いている限りでよく上がる名前はやはりバレー部のレギュラーたち。
もしかしたら、何か…なんて思わず考えてしまう。
何もないと名前さんは言うけれど、距離がこんなにも憎いと思うほどに嫉妬に駆られる。
ピコンと鳴ったラインの通知でトーク画面をひらけばちょうど考えていた定期的に届く今日の木兎と一言添えられた写真。

「うわー、これ梟谷のボクトじゃん。なんで机の下潜り込んでんの?」
「木兎しょぼくれモードやと、試合中もよくなるらしいで」
「これ抱えてる梟谷すげぇな」

最初の頃は素直に思ったその感想を角名も口にする。
ケータイを取り上げて写真フォルダを遡って見出した角名は真剣にそのフォルダをみて最後に一言
「これ、ボクトの写真ばっかじゃね?彼女かなんかなの?あの人」
とざっくり切り捨てた。
聞いた時には彼氏なんていないと言っていたが、状況がもしかして変わったのだろうか。
そのあと、角名が「まぁ、付き合ってたら毎日毎日飽きもせず、違う男と電話なんかしねぇと思うから弟みたいな感じで写真撮ってるだけな気もするけど」なんて言葉は耳にもくれず、名前さんのラインに今日もすごいですね。と一言だけ返事を返して机に突っ伏した。

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