運と命の展開図

「俺と結婚してくれませんか」
「は?」
「は?はないんじゃないですか…?」
「いや、びっくりしちゃって。え、どうしたの急に」


何も無いただの休日、ただのお昼時のしかもご飯を食べている時。
この男、黒尾鉄朗という男は何もなしにプロポーズをしてきたのである。
もう少し場所とか無いのだろうか。雰囲気とか


「ずっとおもってたし、考えましたァ」
「あ、っそう。」
「いや俺だってこんな感じの予定じゃなくてだな、来週ちゃんとホテル取ってるし指輪だって」
「あ、うん。」

「でもしょうがねぇだろ、今だなって思ったんだから」


いつもすまし顔のこの男が少し顔を赤らめつつ小さくなってわたしに伝えてくるあたり本気だ。
これで嘘だと言ったら私は将来人間不信になると思う。


「で、返事は」
「あ、それも今のがいいんだ?」
「当たり前だろ。口に出た手前後には引けねぇしそれに」
「それに?」
「これで振られたりとかしたら俺立ち直れない」


まさにずーんという言葉が似合いそうなほどに凹んだ様子をみせた鉄朗は今にも泣きそうな顔だ。
これすらもきっと彼の策略なのかもしれないが。

「私、てつろのことふるの?」
「はいかYESしか承っておりません!」

あははと私が声を出して笑えば鉄朗は今度ひねくれた顔をみせる。


「ふぅ、ちゃんと答え決まってるし、私はずっのてつろの隣にいるって約束したの忘れてないよ」
「お前…そういう…はぁ…」
「え、なに?だめ?」
「いやいい。」


ため息をついて改まった顔で急に席を立ち上がりおそらく自室へと向かった鉄朗はリビング帰ってくる時には真剣な顔つきで、しかもまた緊張した顔立ちで私の座っている横についた。


「キザっぽくきめていい?」
「いいよ」

「名前の残りの人生おおよそ60年弱。その残りの人生を俺と一緒にいてくれませんか?」

「私以外とその道歩いたらひっぱたくよ」
「お前以外にいるかよ」
「しってる」


じゃあ、次すべきは両家のご挨拶とその前にてつろはうちの両親に挨拶だね。といえばまた複雑な面持ちでおう…とこたえられた
薬指にはめられたダイヤの石が輝く指輪は大きな存在感を放っている。

「高かった?」
「んなもん聞くなよ。溜めてたから気にすんな。と伝えられたとて気になるものは気になるのだ。

「でも、ありがと。こんなの貰うなんて思ってもなかった」
「ちょっとは期待しておけよそれくらい」


きだとまた来週のホテルの日に似たようなことを言って花とかをくれるのであろう。
ネックレスだろうか?

今は両家の両親のあいさつもめんどくさいことは全部忘れてただこの幸せな瞬間を噛み締める。


「ありがとう、てつろ」
「いや、俺こそありがとう。幸せにする」
「幸せにしてね」

空いてる窓から心地よい風が吹き込んだ。


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