幸福が目に見えていた

ことの発端はなんだっただろうか。
おそらくいつものように些細なことだった気がする。
ただ今日は二人とも虫の居所がわるかったのか、いつもより激しい口論となった。

「うっさい!もう知らない!すきにしたらいい!」
「あっそ、じゃあ名前も好きにすればいいんじゃない?」
「するよ!」

ばたん。と響く音。軽い荷物を手に私が家を飛び出た音である。
かつかつとヒールをならして歩いていれば段々と涙が溢れている。
あぁ、そうだ。明日の約束をすっ飛ばした彼が別にいつでもいいじゃんと言ったから、明日は付き合い始めて10年たつ日だから。だからその日が良かったのにそれをわすれて今日、明日侑たちと集まるとかいうから。だから喧嘩をしたのだ。
ケータイの画面を見れば家を出たと気づいたのかかれこれ出てすぐからひっきりなしになる角名からの電話。
それを無視して彼も知らない私の交友関係の職場の女の同僚に電話をかける。
鼻が詰まった超えて電話をかければ察しもよく、時間も日付が変わる少し前で、車で行くからコンビニにいてと言われ、自宅から少し離れてなかなかこないコンビニに入りイートインコーナーで時間を潰す。

「見つけた」

ただ、一言。謝罪でもなければ心配を言葉にしたわけでもない、ただ私を見つけたという言葉。

「知らないっていったじゃん。ほっといてよ。帰らない」
「名前は俺と帰るよ。じゃなきゃお前の同僚止めた意味ねぇだろ」

なぜ同僚のことを知っているのか。聞きたいこともあるがケータイをみつめて話していれば同僚から彼氏さん心配してんじゃん。言い訳もあるみたいだし聞いてみたら?それでもダメならまた電話して。

「なんでまず、知ってんの。」
「お前がよく酔い潰れて帰ってくる時その子がうちまで届けてくれんだよ。毎回迷惑だろうからお前が潰れる日にワン切りかけてくれって俺から頼んだ」
「なんで明日すっ飛ばしたの」
「すっ飛ばしてない。ずっと覚えてる」
「じゃあなんで「残りはここだと痴話喧嘩のクレーム喰らいそうだから家でな」…」

そのまま角名に手を引かれながら下を向きながら行きと同じようにヒールをかつかつと鳴らして歩く。
あぁ、そうだ。このヒールも明日着たかった服に合わせて買ったんだ。

ガチャリと扉をあけて二人揃って靴を脱いでリビングに向かう。
そうすればさっき喧嘩をした部屋と同じでただ一つ違うといえばテーブルに花束とメッセージカード。

「なにこれ」
「10年目は花束がほしいって言ってた」
「え?」
「1年目の記念日に花束がほしい。って#なまえたいがいったんじゃん、だからそのそれと、あとレストランも取ってたし」
「は?」

話をちゃんと聞けばこうだ。1年目の記念日にわたしがつたえたしたいことを今年全部叶えたかったそうだ。
花束、レストラン。なんとそのあとには旅行さえも計画をしてくれたらしい。すでにわたしの知らないところで有休承認も降りていたそうで1週間休みらしい。
それを明日の朝、サプライズしたかったそうだ。

「それをいったって、侑をだすのはどうなの?」
「それは悪いとおもってる。ごめん」

ぎゅっと後ろから抱きしめられ、腕の中、私はそれを視界の端にとらえ、花をみる。

「これはなに?今の流れだとわたしのことだから花言葉とか騒いだでしょ」
「そ、ベゴニアとゼラニウムとイングリッシュローズ」

メッセージカードには幸せな日々 キミありて幸福 微笑みと並んでおり角名これはと説明する。

「ごめん」
「俺もごめん。普通にあげればよかったね」

花束を再びテーブルにおいて向かい合ってきゅと彼を掴んで顔を上げれば顔を赤くして下唇を噛む彼の姿。
知ってるこの顔が何をさすのか。

「本当にむかしからスイッチの入り方、わからない。」
「うるせ。その顔する名前が悪い」
「失礼な」

時計はまわり01:38なにかを欲する彼の目がぎらついた。



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