好きになってもらう作戦

「ねぇねぇ」
「……古森、何?」
「ひまでさ、なまえさん明日の課題みた?」

高校2年。青春真っ盛りのこの年に友人たちはやれ彼氏と喧嘩しただ、仲直りしただ、彼氏ができただ。とよく会話に出てくる。
興味もない私はただただ片耳をそちらに向けて右から左へと聞き流していく。
そう言う毎日だった。

この男がちょっかいを出し始めるまでは。

「見たし終わってるよ、先週から出てたじゃん、あと毎度毎度そう言う悪戯はしなくていいって何度も伝えたよね?」
「おれ忘れててさあ。」
「ねぇ、聞いてる?」

古森元也、バレー部、レギュラー、クラスメート。私に声をかけるときは何かしら悪戯を仕掛けてくる人。
私の知り得る情報はこれくらい。
あと風邪の噂に聞くとあのバレー部の佐久早くんの従兄弟らしい。昨年同じクラスだったが、対人の関わり方、性格、が180度違っていた。

「でさ、これ見せてくんない?」
「昨日も言ってなかった?」
「そうだっけ?」

にこにこと笑うこの人はいつだったかからかまるで小学生の悪戯を仕掛けてくるようになったのだ。
いよいよ最近は友人たちにも古森くんと仲良いね。好きなの?と聞かれる始末。見てくれ。遊ばれているだけだ。

「そろそろちゃんとやらないとテスト大丈夫なの?」
「へーきへーき!全部覚えるし!」

ありがとう!といってそのまま前の席に座り私の机で堂々と写し始める。
いいのか。そもそもこの人確かそんなに忘れるようなタイプだったっけ…?

「これ終わんないと部活行けなくてさー。飯綱さん、あ、部長ね?が…」

私も古森くんがそれ返してくれないと帰れないんだよね。私それ明日当たるんだよね。と思いつつ今日は友人たちのではなく古森くんの話に耳を傾ける。へー、と答えていれば古森くんに聞いてないでしょ。と笑われてバレてるならとうん、ごめん。という。

「なまえさんさー、お友達の話も対して聞いてないよね。俺知ってるよ」
「…よくわかったね、あの子達にはバレてないのに」
「さぁ、なんででしょ?」
「え、何?」
「古森、遅い。早く」
「悪い、聖臣!じゃあね、なまえさんありがと、これ」
「あ、うん、じゃあね」

はい、と渡されたノートを静かにうけとり何故そこを誤魔化すのだろう?とかばんにしまう。
そのまま教室を出ればすこし遠くで佐久早くんがお前、そこもう終わったって言ってただろ。と古森くんに聞いていて古森くんは私が教室から出たことを確認するといつもより気持ち大きな声で

「好きな子に意識してもらうための作戦」

とニヤリと笑いながらいったがそのあと、まだまだなんだけどなー!さ、部活行こうぜ。と佐久早くんと足早に体育館に向かっていった。

思わずその場で固まってしまい、徐々に顔が赤くなるのが手にとるようにわかる。
明日から私はどんな顔をして彼と会えばいいのだろうか?
とりあえず友人たちとのラインにそのままの勢いで、相談をするのだ。
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