及川 徹

10月末、風が寒くなり、冬に近づく季節。

「岩泉、及川は何そわそわしてるの?」
「知らん」
「花巻」
「知らねー」
「まっつん」
「俺も知らない」

「ハロウィンだよ!ていうか、なまえちゃん!ここ!更衣室」
「そうだね。あ、花巻、それちょーだい」
「ほい」

「みんなもなまえちゃんがいることに慣れすぎ!」

ギャーギャーとひとり騒ぐ及川を目の端に秋限定のチョコレートを頬張る。
この時期はかぼちゃやらお芋やら限定品があってコンビニのお菓子の品揃えが豊富である。
私は花巻がだべるさつまいも味の限定を頬張る。

「うるせぇぞ及川」
「岩ちゃん!冷静になるんだ!なんで俺の彼女はこんな堂々と男子更衣室にいる!?」
「お前が呼んだからじゃねぇの」
「そうだった!」

用事があったんだ!と声を荒げて私を見る及川はどうやら真剣らしい。さて、なんと話し出すのだろうか。
ちゃんと聞いてあげようと及川を見た時だった。

「なまえちゃん!これきて!」
「なんで?」
「か、可愛いなぁって」
「いや自分で着なよ」
「いや、俺が来たってなんも生まれないよ」
「てかなに?それキョンシー?」
「!そう!可愛いデショ!」

みんながまた変なこと言い出したと呆れ顔をし、私もおそらく似たような顔をしているんだろう。
ただ1人及川だけは目を輝かせてこちらを見ている。
はぁ、とため息をついて及川が手に持つそれを受け取り広げてみれば
黒を基調とした服に黄色やら青やら、帽子にもキョンシーならではの色合いの服が出てきた。

「今日じゃなくてもいいからきてほしーなー…って……」
「…」
「だからえっとー…」
「知ってる?及川」
「なに!?」
「キョンシーっていわゆるミイラ見たいのなんだけど、違うのは乾燥してるかしてないか、みたいなとこあって」
「え、うん」
「基本的に甦らした術士の言うことしか聞かないし怪力で性格はどの個体も血に飢えた、人喰いの妖怪なんだよ」
「え、、何。どうしたの。」
「でね、術士が弱いと従わないんだってー」

「こわいよね!」

その時の及川の顔は真っ青で私の顔は晴れやかだったと言う。まわりには私がお前に従う可愛いキョンシーでいられるとでも?という風に取られたらしい。あながち間違ってはいないと思うけれど、そこまで凶悪な性格をしてるわけではないし、私はそこまで怪力ではない。

「何をそんなにビビってんのよ。」
「え、俺、なまえちゃんに喰われる?」
「あんた、ほんと何言ってんの?私別にキョンシーじゃないんですけど」

その後及川はしばらく私に対して下手にでてて校内ではついに私が及川を尻に敷いたと噂されるのである。




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