宮 侑

「その布何に使うん」
「へっへっへー!お化けになったろおもて!」
「…おま、あほちゃうか」
「はー!?衣装つくんねん!い・しょ・う!」

10/31、ハロウィン。
それは収穫祭と言われ海外では小さな子供がお化けに扮して近所の家を周り、trickortreatといってお菓子をもらう日である。

「なんや、侑、みたいんかぁ!?」
「はぁ!?お前みたいなズンドーなやつのお化け見たってなんも思わんわ!」
「はー?!失礼!アツムは毒入りアップルソーダでも飲んどけ!」
「飲まん!」

つーかそれはどっからでてきてん!と叫ぶ侑。
昔からことあるごとにやっかんでくる侑はやはり今回も邪魔をしに入ってきた。
あとこの白のシースルーの布を縫い付ければ、今度のハロウィンパーティーの衣装は完成だというのに、侑が邪魔をして作業が進まない。
服をつくるのが好きな私にとっては魔女も悪魔もヴァンパイアもハロウィンは凝った衣装をたくさん作れて楽しい季節である。

「侑はフランケンシュタインでもしとけや、それかゾンビ。喋れんようになれや」
「なんや!!俺のこの美声聞こえんくなってもええんか!!」
「ええわ。」
「なんやと!?」

生まれてこの方17年、宮兄弟と幼馴染として生きてきたのも17年。
さすがに2人の扱いにもなれ、高校まで同じとなった。
ふたりはずっとバレーに打ち込んで、治はバレーの他にもご飯が好きで、ご飯に走った治の代わりをするのが私だった。

「で?今度はなん?侑が被服室にくるなんてなんかあったんやろ」

きっと本来の予定であるだろう侑自身のジャケットを見ればおそらく治と殴り合いの大喧嘩となったのだろう、何箇所かボタンがはずれている。
自身の衣装をつくるよりも早くこの子のボタンをつけなければ。
そう思い侑に喧嘩への抑止をかけ立ち上がる。
針山からちょうどいいサイズの針と糸を準備し、数分も経てば数カ所の取れかけのボタンはすぐに直った。
侑といえば相変わらず早いなぁ。と言いながら喜んでくれた。

「その衣装いつ着るん」
「当日やけど」
「あかん。」

なんで?とくちに出す前に侑は席から立ち上がり、ズンズンと私に向かってくる。

「こんな、透け透けな衣装でおまえは俺以外にそれ見せるんか。」
「友達しかおらんよ」
「場所にもよるやろ。渋谷みたいに路上でやったら見えんやぞ。」
「いやシースルーだけど、下地ついてる…」
「関係ない」

いやないだろう。あったとてでは?とも思いつつはいはい、と軽くあしらって当日は友達とちゃんと遊ぶのだ。

「おまえ、それ終わったらちょお来い。」
「えぇ、」
「えぇ、やない。」
「いやまだかかんで」
「待つ」
「待たんでええわ」
「しゃあないやろ!なんで他のやつにそんなんみせんとあかんのや!俺のやぞ!」
「…俺のじゃないわ」
「なまえは俺のもんやもん」
「何言っとん」
「こないだサムにもいうた。なまえは俺がもらうから、お前は手出しすんなやって」

通りで、こないだ治に
『侑のお守り大変やけど、まぁ、なんや気張りや』なんて言われたのか。いつも大変だわお前らのお守りがと思いながら聞いていたけど思いもよらぬ伝え方で驚いている。

「せやから、ほれ見せんのもおれだけにし」
「は、嫌や。」
「はぁ!?」
「これはハロウィン着るために作っとんの。でもその前に試着で侑には見せたるから我慢し。」
「いや、そうじゃ」
「それで侑が見せたないとこカバーしたるわ。変態」
「変態ちゃう!」

なんやねんほんま!と怒りながらも私の隣に座って完成を待つ侑はすこしだけ可愛らしかった。





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