『本日何本目だろうか!影山サービスエース!』

バレーボールの試合、久々にのんびりと見るその試合には昔の恋人の姿。
中学生の時付き合って、自然と消滅してしまった関係だった。
たのしそうにバレーをする影山が好きだった。いつだっただろうか、追われるようにバレーをするようになったのは。高校に入って風の噂で影山がとんでもない相棒たちとと宮城の春高で優勝したと聞いた。
テレビでみた影山は昔のように楽しんでバレーをしていた。

「懐かし。」

中学時代の忘れ形見なわたしの恋心。
あのときこうしていれば、こう言ってあげれば。なんて今更としか言えない。昔の行動に後悔したって変えられない。彼の今を作ったのは隣で飛んでいる日向選手なのだから。

『ここで試合終了ー!』
『いやぁ…』

語りだす解説、鳴り止まない歓声、それが彼の今の世界。連絡なんてしない。できるわけない。それでも時折彼の声が聞きたくて、彼の姿が見たくてこうしてバレーボールの試合の再放送や中継を見た。実際の試合には行かない。あったらまた恋しくなってしまうと直感したから。
今日の試合も良かったなぁ。なんて思いつつ、テレビを消そうとした時だった。

『みてっかわかんないんすけど、社会人になってから100試合勝ったらもう一回告白するって約束した人がいるんス』
『へぇー!それはまた!じゃあ今日の試合が?』
『100試合目っス』

そんな約束をした人がいたのか。高校時代の彼女かな。知らないけど。実家から出ていないわたしは未だに宮城にいるし、職場も宮城だ。
影山は高校卒業してすぐ東京のアドラーズに所属したからきっとその時にできた彼女かもしれない。そもそも今日見ていた試合は先日のビデオだからもう伝え終わったはずだ。
モヤモヤとする気持ちを捨てるべく、テレビを消して休日の地元を歩こうと扉を開けた時だった。

「よぉ」
「…、影山?」
「俺以外に誰がいる」

いや知らないけども。正直なツッコミは彼に伝えたとて何言っている?という顔で話を逸らされてしまうのがわかっていたし経験したこともあったから何も言わなかった。

「どうしたの、急に」
「お前に会いにきた」
「はぁ、」
「約束」
「?」

なんの約束だろうか?首を傾げて考え込んでいたら目の前で影山にため息をつかれた。
ため息をつかれようとなんだろうと、思い出せないのだ。影山を忘れようとした約7年間。君を忘れようとして他に彼氏を作ったりしたこともあったし、結局最後は彼氏から誰かと重ねてると言われて振られ続けた。
その誰かが自分でも誰だかわかっていたし、自分でもいつも最後に気づいていたけども。

「お前が言ったんだろ、100試合かてって」
「え」
「俺が、その、告白したときに!」
「…」
「『じゃあ大人になって100試合勝ったらプロポーズしてね』って」

言ってただろ、ボケ。と弱くなる語彙。
この男はわたしがその約束を覚えていると思ってここにきたのだろうか。というかそもそも自然消滅した彼女に当時の約束ぶら下げて会いにくる度胸がそもそもすごい。
こういうところがあるから選手になれたのかな。この人…とつい考え込んでしまった。

「おい」
「あ、うん。ごめん。で、何?」
「だから、そのな。中学んときは悪かった…」
「?」


「だからもう一度やり直して欲しい。今度こそ、お前をしあわせにする!」


ざあっと風が強く吹いた。まるで時間なんて忘れてしまえ、と言わんばかりに。
ぽろりと溢れる涙にわたしは止める手段なんて持ち合わせがなくて、影山は慌てるばかりで思わず笑ってしまった。

「ふふ、」
「笑うな」
「ちがうの、わたしこそ中学の時はごめん」
「?」
「今度もまた貴方の彼女にしてくれますか?」

学生の時より大人びた顔、空白の時間を埋めるように影山に飛びつけばびくりとも動かずわたしを抱きとめて、「あたりまえだ。」なんてかっこよくきめてずっとお前が好きだった。なんて一言を浴びせられれば今までひた隠しにしてきた想いが溢れて込み上げる。

初めて好きになったのは君だったんだよ。
そういつか再開した時に言えるようにと思って生きてきた。

「ねぇ影山…」
「なんだよ」
「わたしに初めての恋を教えてくれてありがとう」

溢れて止まらぬ涙を拭って精一杯の感謝と恋を君に。

伝えてもいいですか




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