付き合って、もう何年。
高校から付き合い始めて、気づけば20も半ば
自身の店舗も安定してきて、いよいよプロポーズしてもいいのではないかと思っている。


「今一歩踏み出せんねん…!」
「意気地なしか」
「うるさいわ。ツムやって言えてへんやろ」
「あ?いうたで。こないだ」
「…はぁ!?」


閉めた店内、カウンターに座るのは双子の侑。
いつの間にやら侑は彼女にプロポーズしたらしい。少し前に話した時には二人でどうする!?と語っていたはずだったのに。おかしい。


「なんやねん…」
「ちんたらしとったら愛想尽かされるで」
「やかましわ!決めたわ。明日する」
「おーしろしろ、はー、うまかった。ついでに呼んどいたで」
「誰?」
「なまえ」

ほなな、と言って勘定をおいて店の戸を開け出ていく侑。
なまえの家からここはどれくらいで着いただろうか。そもそも侑はなんと言って彼女をここに呼んだのだろうか?帰る準備をするべくレジを締め、食器を片し、明日の仕込みをする。
侑が出て行ってから30分程度、再び戸が開く音がした。

「治?どうしたん?話あるって侑くん言うとったけど」
「あ、おん、もうちょいでこれ終わるから待っとって。」
「ん、わかった。」

カウンターには腰掛けず、畳に腰掛けてのんびりとする。侑がよんだのは癪に触るがそれでもしてくれた理由を聞けば治が話あるって言ったからでしょ?侑の話なんて私聞かないなんて言われれば気分がいい。
少し目をやれば静かに待っててくれている彼女が笑ってくれて待っている。

付き合い始めて何年経つだろうか。
大きい喧嘩もしたし別れかけたこともある。それでも一番に心配して一番近くにいてくれた世界で一番好きな人。

「なぁ」
「ん?」
「結婚しよや」
「ん?」

ぽろりと溢れた言葉。なんて変哲もない日で綺麗な夜景でもレストランでもなく俺の店。もうすぐ23時になろうとする時刻。
それでもさっきの侑の会話からかずっと考えていたからか、それともこのありふれた時間がとても好きだと思えたからか。多分全部が要因でこんな味気ないプロポーズになってしまった。

「え?結婚?」
「おん」
「い、いまいう?」
「俺も思ったけど好きやなぁ結婚したいなぁって」
「なんもしてないで、座っとっただけ」
「それが日常になるんやろ、幸せやんか」

この男は…なんて頭を抱えて畳に伏せた。
結婚が嫌だとかそう言うわけではないとは思っているが、返事がないといささか不安になるものだ。
店の締め作業を終え、エプロンやらを脱ぎ置きなまえのもとに向かう。
未だにうぅ、と耳を真っ赤にしながら縮こまる姿は可愛らしくて、愛おしい。
そっと隣に座りこみそっと手を頭におく。


「なぁ、なまえのこともらってもええ?」
「私のこともらってくれますか?」
「質問返しはあかんやろ」
「ええやんか」
「なまえんこと俺がもらったるよ」
「ふふ」

指輪なんてそんなもんあとで準備すればええ。式だって身内婚で充分だ。毎日の小さな幸せをこれからもらえるのかと思うと心がすでにいっぱいになった。


貴女をもらってもいいですか




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