あぁ、懐かしい好きな人の顔。
わたしの青春だった、あの3年間。

なんだかんだ忘れたことのなかった高校時代の好きな人。
告白もせず、ただただ友人のように過ごしたあの日々にやはり卒業後、何度後悔しただろう。

実家をでて、はや何年。気づけば26になる年だ。
オリンピックだどーので、世間はざわついている。夏の暑い仲選手たちや関係者の人たちは走り回って大変だろう。
そんな中で開かれる同窓会、頻繁に会う友人もいればもう7、8年ぶりだと言う友人までバラバラだ。

「ねぇ、なまえ。今日、黒尾来てるよ。」
「ちょ、しー!しずかに!聞こえるじゃん!」
「もう時効でしょ。」
「時効だけど、時効じゃないと言うか……」

しりすぼみしていく言葉に友達は察してまだ好きなのね。と小声で答えてくれる。
もちろん高校卒業の後付き合った彼氏もいた。
でもやっぱり黒尾が忘れられなくてあの人の面影がある人を選んではやっぱり違うなとなって別れる日々。
何年経っても忘れられない好きな人。

「いんじゃない?これを気に告白してくれば?」
「無理無理無理、直接とか無理!」
「じゃあ電話とか、あるじゃん」

ギャーギャーと友達と話していた二人だからと気を抜いて誰もこの端のほうにいる私たちに声をかけてこないと思っていたからか、少しお酒が混じっていたからか、近づく一人の気配に全く気づかず二人で盛り上がってしまった。

「なまえサン」
「…はい!」
「お、噂をすればじゃーん。なまえじゃ、わたしあっちで話してくるわ」

じゃあねと言って立ち去る友人を横目に反対側にたつ黒尾を見る。
いつの間にこっちにしたのだこの男は。先ほどまで向こうのバレー部だった子達と話していたではないか。
それともそんなに長い時間話し込んでいたのだろうか。

「で?噂ってなに?」
「いや、大した話じゃないよ、そう、誰が昔から人気だったとか、黒尾は人気だったね!って!」
「ふーん。」

訝しげな顔でこちらを見る黒尾にどきりと心臓が跳ねる。
むかしとかわらないようで大人びた顔立ち、なんでも聞けばバレーボール協会に入社したとか。結構な倍率だからそもそも入社困難なはずなのにすごいことである。

「身長もあったし、優しいしさ!」
「ま、それも特定のやつだったけどネ」
「え、そうなの?」

他愛無い話。まるで高校時代に戻ったような錯覚、あれから何年も経ったと言うのにこの人との会話の心地よさは変わらない。
話していると湧いてくる好きという感情。
私はやっぱりこの人が好きなんだと実感させられる。

「あ、呼んでるよ、黒尾のこと」
「…ま、いいか。じゃこれ、俺の電話番号」
「?」
「お友達と話してた時の中身のお電話お待ちしてますネ。いいお返事するんで」

じゃ。と言ってニヤリと笑った彼がひどくかっこよくみえたがそれよりも友人との会話を実は聞かれていたと言う事実に挙動不審になる。

もちろんその日の夜に彼と恋人関係になったのは分かりきった未来である。

電話もらってもいいですか




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