黒板の板書の音がカツカツと鳴る。
そして同時に教室内に響くシャープペンシルの音。
ちらっと、横を見れば初めてではないかという好きな人。

『角名倫太郎』

ノートの隅に書く、恋をした人の名前。
5文字の漢字が少し恥ずかしくて愛おしくって誰かに見られる前にいそいそと消しゴムで消した。消したその隣に自分の名前を並べてみようと思うものの、こそばゆくてそのまま何も書かず想いにふけていた。
少しだけ、視線を感じて横を見れば角名くんがこちらを見ていた。

「ねぇ、みょうじさん、次みょうじさん。指されてる」
「っえ!」

ガタッと椅子を鳴らして立ち上がり慌てて黒板へと向かって答案を書き込む。
緑の壁に白いチョークでかきこむ答案が間違っていないかと心配になりつつも書ききり席に戻れば正解という先生の声が響くとホッと一安心する。
着席後、最初はなかったはずの4つ折りの紙。
手紙だろうか?と不思議に思っていたところ隣の角名くんがジーっと見つめられていた。
それも不思議におもえばトントンとさしたプリントの端に早く開けて読んでみてとかかれていたため差出人はすぐ角名くんだと推理できた。



『俺の名前とか書いてるから気づかないんだよ。』



「!?」

バッと横を向く角名くんはもう黒板を見つめてノートに板書を書き写していた。
いつからだ?もしかしてずっと気づかれていた?名前だけ書いてたからと言って恋心を知られたわけではないだろう。でも気づいていたら?
悶々とする思考の中でもう一枚隣から四つ折りの紙を投げられる。
追い討ちをかける角名くんから投げられた四つ折りの手紙を手にして、板書も写さずほうけていれば授業が終わるチャイムがなった。
響く日直の号令で一斉に立ち上がる。
同時に発せられた終礼の挨拶でそれぞれに席をたったり、次の授業の準備をしたり。
わたしはといえばその場にストンと自身の席に座り四つ折りの新しい手紙を開きそこねていた。
先ほどと同様に視線を感じ角名くんを見れば同様に自分の席にすわってこちらをみて笑っている。


「読まないの?」
「いや、読むけど」
「じゃあ、早く」
「せかさんでもよむって」



早く読んで。と言われて意を決して四つ折りを開く。少し男の子っぽくて綺麗な書体でかかれる文字で連ねられる小学生の頃流行った傘の絵とその下に書かれた私の名前。


『みょうじさんの隣側に俺の名前書いてもいいですか?』



「返事、いつでもいいよ」
「まって?これ何?」
「そのまんま。あ、でもやっぱり、」


絶対そばで楽しませるから。いい返事ちょうだい。
そう言って立ち上がって私の腕を掴んで教室をとびだして屋上で今度は私からその言葉を伝えるのだ。
次の日にはお互いの名前の呼び方が苗字から名前に変わって、もらった手紙に書かれた名前はこれからお互いの世界で一番好きな名前になるのだ。

手紙書いてもいいですか




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