05

「サムーー、おにぎりくれや!トロ!」
「うっさいわ、お前くるからさっきまでいてくれたお客さん返したんやぞ。」

少しは有名人なん自覚しろや。と双子の片割れが厨房に消えていく。
ふと、カウンターの隅に目をやると手帳が置いてあった。

「おい、サム多分忘れ物やぞ。手帳」
「あ?ほんまか。あー、これあれやなさっき来てくれた女の子らのや。明日会うやろし、持ってくわ。」
「なん?バレーファンか」「片方はお前のファンでもう片方は翔陽くんのファンらしいで。人でなしにあんないい子なファンなんてつくんやと思ったわ。あ、おまえがSNSにあげた、年パスのサインの子やで。あれ嬉しそうに見とったから忘れんわ」

あ、あの子か。先週の試合を思い出す。
少し童顔できっと俺より年下かなと思う。身長もきっと160センチないくらいの明るいピンクブラウンの髪色がよく似合う子。
名前はなんで言ったか

「おまえのファンにしては珍しいほんまにええ子やったぞそら、ファンやからお前のことはよう聞かれたけど、一歩立ち入ることはせんし俺にも媚びうらんとただただめしくってかえってったで。ああいう子は大事にしたれや。喧しブタいわずにな。」

サムに言われたってことは恐らくほんまに何もせがまんと帰ったらしい。手帳を開けば仕事の日程や用事とBJの試合の日程がすべて書かれていて試合に行ける日には○行けないだろう日には×が記されていた。


「おい、サム。ペンかせ、なんでもええから。」
「ツムお前ほんま人でなしなんか。それはファンサービスじゃなくていたずらやぞ」
「私用も書いてあるんやから多分平気やろ」

サムが呆れ顔でこちらを見てるのがわかるがこいつがそんなに褒める子気にならんわけがない。
あした来た時にまた俺のところに来てくれた時に少しまたこれと似たようないたずらを仕掛けよう。
手帳に見つけた本人の名前を文頭につけて末尾には俺のサイン。

あぁ、明日の試合が楽しみや。


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