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「あれが聞こえていなかったに一票」
「んなわけないと信じてるに一票、じゃ、わたし翔陽くんのところ行ってくるから」

びゅんと颯爽と日向くんのところへ駆けていった萌絵果を見送り一人、侑さんのところへ向かう。
自分でもさっきの行為がなかなか危ない橋を渡った行為だと自負しているし、すでにやってしまった感が強い。本当は角名選手のところに先にむかって謝罪して、侑さんのところにいって、しれっと謝る予定だったんだ。昨日の夕方くらいまでは。

少し歩けば今日は誰も列を作らせず、一人仁王立ちしてコートの近くに立つ推し。聞かれたか、と流石に気づくその待ち姿はすこしソワソワしているように見えて明暗選手にもつっこまれている。

「名前ちゃん!そこ立ったんとらんと! はよ、こっち!!!」


やはり見解通り、私のせいで待機列が無しだったらしい、普通のファンの方に申し訳ない。
少し歩けば待ってましたと、捕まえられる。

「で、勝ったっで。昨日の話の続きしよや」
「耳良すぎか…」「もう話そらさせへんぞ」
「ぐう」

自信が6割期待が3割心配が1割といったような、試合中けっしてみせない顔。顔が少し赤いのも気のせいじゃないはずだ。私が知りうる顔で一番、見たかったであろう顔。

「私はただのファンだったんですよ」
「知っとる」
「りあこ気味にさせた責任をとってください」
「ええよ。俺の初恋取ってった責任も取ってってくれるんやろ?」
「その話はまた後で詳しく」
「いけずやな」
「先に言っときますよ、わたし。ただのオタクですからね。りあこ気味だった。」
「せやな」
「侑さんがりあこ気味にさせたんだから」
「りあこ気味やなくて、俺の恋人になったやろ」
「そういうとこ。りあこ製造機め」

なんやねん、それ。と小さくつぶやけば体育館だというのに、侑さんは私を抱き止める

「もう逃したりせんからな、こないだみたいに」
「あれは、侑さんがあんな話するのが悪い」
「自分に嫉妬してかわええなぁ、俺の彼女さんは」

少しムカついてお腹をどつけば上から痛いわ、と笑い声がする。

「私、クソ重いから気張ってくださいね」
「俺も負けんくらい重いで、なんてったって歴代の彼女名前ちゃん引きずってたんやからな」
「そういう話をやめろってこないだで学んだはずの推し消えたんでそろそろ角名選手のとこ行ってこなきゃ」
「ハァ!?角名はあかん!ぜったいだめや!」

「他の子のあいてしてくださーい」


まだ実はちゃんとした連絡先も知らないことに彼はちゃんと気づいているだろうか。
なんならここが試合後の体育館だということも気付いていただろうか?気づいてやっていたのかもしれない。
きっとすぐにネットニュースにでて明日職場で色々聞かれる。

「よ、脱りあこ」
「ちがうよ、りあこ気味だっただけだもん。彼女だもーん」
「宮さんにあの写真見せたことに感謝の意を表せ」
「うるさいわ」

Twitterは鍵にして、インスタはバレないように変えなきゃ。治さん経由で今日はおにぎり宮で待ち合わせをさせてもらおう。


「名前ちゃん!連絡先!俺持ってへん!!くれ!!」
「あとでおにぎり宮で渡しまーす」
「すぐ電話できひんやん!」

後方から追いかけてきた侑さんにそう声を掛ければ納得いかないようで明暗選手たちに抑えられてる。

「さ、かーくれよ!」
「お前はもうここで隠れることはできないよ」
「萌絵ちゃんもねー」

私は今日この日、りあこ気味を脱却しりあこをふっとばして推しである宮侑の恋人になりました。





end


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