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「久々じゃない?海にいるの」
「久々にきた、カメラなしで」
「まぁ、それもなんだけど」

今日は夢の国にいる(海のほう)侑さんを追いかけ始めて、2ヶ月弱。行ける試合は全て行き、治さんが出店すればおにぎりも買い、試合後は侑さんのところへ向かった。
向かえばいつもハイタッチと頭撫でてくれてわたしが年上なのをいつも忘れる感覚に落ちる。写真を撮る距離はだんだん近くて、こないだはいよいよ肩を一方的に掴まれた。
お陰で萌絵果にはりあこじゃんとよく言われる。ちがうりあこ気味なのである、りあこじゃない。


「萌絵果どこいく?」「あれ、落ちるやつ」
「はーい」

ここでは、いつもだったらカメラを持って推していたお兄さんところにかけていってカメラを構えていた。
今日はジャッカルの試合もなく、予定も空いていて萌絵果と久々に普通に遊びに来たわけだ。

「めっちゃ並ぶねぇ。やっぱ混んでるわ」
「いつも並んでなかったから、気づかなかったけどやばいねぇ」
「昔さ、大学生の頃!暇だからならぼうみたいな話した時に高校生迷子になってるのたすけたりとかあったよね」
「関西の修学旅行生でしょ?年パ貸してファストパス取らせてあげたやつ。4人の!」
「そうそう!懐かし。名前が声かけられてだったよねぇ」

たしか、あれは19になった時だった気がする。
萌絵果ときたのが数年ぶりだったからか話が盛り上がった。
ぶらぶらとお酒を片手に夏に歩き回る。
人も多いからマメラグに逃げ込もうと話になった。


「あれ、名前ちゃん?」
「およ?ほんまや、名前ちゃんと萌絵果ちゃんやん」

「めっちゃウケる」「おかしいおかしい。なんで後ろから推しに声かけられるの」


エンカウントは嬉しいけど、ここで会うのはきいてない。ていうかエンカウントありすぎでは?

「ちょっと、急に走り出さないでくれる。高校の時みたいに迷子になるわけ?」
「二人して相変わらずなんが流石やな」
「うちの常連さんやねん」
「俺のファンやねん」

そーかよと目を細めつつ呆れた顔するこれまた有名人EJPRAIJINの角名選手、もう1人はお友達はあきれたように笑っていた。

「すまんな、お姉さんら急に双子が」
「いえいえ、大丈夫ですよ。こいつのことはほっといてもらえれば大丈夫なんで」
「萌絵果のそういうところ」


名前ちゃん何のんどん?と侑さんから声をかけられお酒ですと答えれば今日も呑んどるんかと笑われた。この状況になる前にもっときついお酒呑んどけばよかったと少し後悔。


「珍しいね、侑から声かけんの」
「俺の、お気に入りの子なん!かわええやろ!」

肩を掴まれ、ぐっと私服の侑さんに近づく。
いつもは香らない香水の匂い。


誰か今のこれ録音して、これだけで仕事頑張れるから。




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