02
ある昼下がりの丘の上。
雲一つない晴天に、心地良い風がそよぐ。
丘にそびえ立つ大木が葉を揺らし一枚ヒラヒラと舞い落ちる。
木の葉一枚落ちた先には、穏やかな風景には全くそぐわない先の見えない大穴が開いていた・・・




「アリス−?!」

そこへ一人の少女が、周りを見渡しながらゆっくり歩いてきた。
ブルネットの光に輝く髪がそよ風になびく。
大きな瞳は深海の様な深い蒼色で、警戒心の強い小動物さえもその容姿を覗きに木陰から出てくる程、整った顔をした少女だった。身を包む服は富裕層が通わせるエリート学校の制服で、少しアンティーク調の上下は濃紺で胸にはさり気なくエンブレムが縁取られている。肌の露出を押さえた作りで、長めのふんわりしたスカートから黒いハイソックスに包まれたすらりとした細い足が覗く。
辺りの木々が風に晒されサワサワと揺れ動き、温かい木漏れ日も揺れる。小鳥のさえずりが至る所から聞こえるが、人がいる気配は一切しない。彼女は顔に手をかざしつま先立ちをして遠方まで視野を広げる。


―――あれ・・?ここにいるって聞いてきたんだけど・・


身なりは裕福そうだが、どこか仕草が庶民臭い彼女はキョロキョロと周囲も見渡すが、いくら歩いても人っ子1人いない。
とてつもなく長閑な場所だ。
人の気配が全くしないのに少し不安になってきた彼女は小走りで探し回る。周りばかり気にして足元を見ていなかったせいか、それとも元々の鈍くささか、目の前に薄黒い大穴が開いているのには全く気付きもしなかった。そのまま前へ飛び出し、出した右足が地面に着かない所でハッと下を見た。


(え?!)


気づいた時には時すでに遅く、左足も上げてしまって転ぶように前のめりになる。手の付く場所などどこにもなく、空中でもがきながら彼女は真っ暗やみの空洞の中へ吸い込まれるように深く深く落ちていった―――


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bkm


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