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「いけないっ!大事な事を忘れていました!!」
そこまで思い出して、パロマはガシッとアリスにしがみ付いた。
「は?な、何?パロマ?!」とパロマの勢いに押され気味のアリスを、急に立ち上がったパロマがグイグイと引っ張る。
「こんな世界、貴方がいるべき所ではありません!私と一緒に元の世界へ帰りましょう!早く立ちあがって!今、動けますか?」
「パ、パロマっ?!どうしちゃったの急に?!」
二人の世界に埋没したパロマは、アリスを動かす事に躍起になっている。冷静に話をしようとアリスが嗜めたが、パロマは言う事を聞かない。
「早くっ!アリス、今だけは私に従って下さい!どうか後生ですからっ!!」
「何?何?!どうしたっていうのよパロマ!!!」
アリスが梃子でも動かないので、パロマは仕方が無く誰にも聞こえない様に、アリスに耳打ちをする。
「お城の中に『旅の扉』という瞬間移動装置があるらしくて、身を潜めるには持ってこいです。そこまで頑張って二人で逃げましょう。」
「・・・・・・・・はあ?たびの・・・どびら・・・????」
アリスは話についていけずに、ポカーンと口を開ける。
パロマは密かに計画を立てていたのだ。
ナイトメアの話(実は嘘八百だが、その事をパロマは知らない)を聞いた時から、もし、僅かな可能性を幸運にも手にして、アリスと再会を果す事が出来たのなら、そしてそこに、第三者的な邪魔な存在が介入してくる恐れがあったのなら、




―――旅の扉に入って、海の孤島にワープする!!




誰もいない離れ小島だったら、少なくとも命の危険に晒される事はない。十分に時を計って、それから元の世界に帰る方法を模索すれば良いのだ。
「大丈夫です、アリス。これでも私って役に立つんですよ?釣りでも小屋作りでも何でもこなして、アリス一人位養ってみせます!」
「・・・・・・・・・あんた、何言ってんの?」
二人の愛の逃避行の話の途中で、カチャリと銃を構える音が聞こえ、二人共口を閉ざした。
「なるほど。やっと分かりましたよ。」
ずっと存在を無視していたが、いつの間にか距離を詰めていた若者が一人。





「罪人なんて生易しいものじゃない。貴方は僕とアリスの仲を永遠に裂こうとする、最も不愉快な邪魔者だ。」








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bkm


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