僕は女の子が大好きだよ。その言葉の真意を疑うなら十年くらい禁酒したって良いくらいだね。そのくらい女の子が大好きなんだよ。だってそうだろう。あんなに移り気で刹那的で可愛らしく、そのくせ露ほども信じてもいない永遠などの口約束を欲しがって花弁が花開くように微笑ってみせて。男なんかよりもよほど利発で頭が切れるくせに、態度行動共にに素知らぬ顔で毒を盛る事を怠らず。昨日と今日で裏と表が入れ替わってしまうかのような、囂しくも愛おしい。あんなに息つく暇もないくらいに飽きない存在を彼女達以外に僕は知らないもの。


最近はめっきり遊びに行かなくなってしまったけれど、ほんの数百年前くらいまでは人の世にだって女の子遊びに行っていたのだから、どれだけ好きか信じてくれたって良いようなものだけれど。

酷いよね。僕はみんな大好きだから、あんなにも平等に足げしく寝所へ通っていたと言うのに誰一人として僕の本気を信じてはくれないのだもの。ああ、君も信じてくれていないんだったよね。酷いなあ大好きだよ本当に。それでも信じてくれないのなら―――まあ、それはそれで構わないのだけれど、ね。


ん?どうして僕が人の世に行かなくなったかって。可笑しなこと聞くね。ベッドに居るのに暇なのかい?
そりゃもちろん天界の女の子の方が可愛いし、君みたいな美人さんだってよりどりみどりって痛い痛い痛い!耳と髪引っ張らないでよ!最近の女の子ってもうほんと技かけたり投げ飛ばしたり男の子よりカッコよくなっちゃって困っちゃうよね。そんなところも好きだけれど。あれ、照れてくれないの。手強いなあ。




そうだね、人の世ね。一々門を潜るのがめんどくさくなったってのもあるけれど、一番はアレかな。やっぱりすぐ死んじゃうんだよね。ああ、僕が猟奇趣味ってわけじゃないよ。そんな露骨に嫌な顔しないでよ。
寿命だよ。寿命。ほんの数日、数年、数百年目を離した隙に初めから居ないもののようになってしまうだなんて怖いと思わない。ただ居なくなるんじゃないよ、誰もその子を覚えて居なくなるのさ。

―――人の世の女の子はね、花みたいなものなんだよ。生まれて育って花咲き枯れて種子を落とす。儚いものだよ。育ったままの場所に居ても、綺麗に摘み取って活けてもいずれは全て居なくなってしまう。此処の花のような普遍も永遠も無い。それがどうも、性に合わなくなってしまってね。

生きとし生ける全ての花は美しいよ。それは僕は信じているし、実際に美しいとも思っている。女の子、女の子って言うけれど僕にとって女性だって女の子だと思ってるし。ストライクゾーンの広大さなら大抵負ける気がしないしね。
真珠の棘で引っ掻いてくるさまは愛らしいし、古き良き樫には菫には無い趣がある。色変わりをする紫陽花に思いを馳せれば、見事に設えられた薔薇の迷宮。花瓶に活けられる大輪の花束も不毛の地に咲く一輪も好事家が造りあげた造花も店先で叩き売られる花でさえ愛おしいことには変わりない。






けれども、それはもう簡単に居なくなり消えてしまうのもまた人の華なんだよ。

いくら愛でて大切にしてもその華はいずれ枯れてしまう。だから僕は人の世から身を引いたんだ。住む世界が違う、生きている時間が違うとは良く言ったものだよね。実際その通りなのだから。


だから最近は枯れない硝子の花を愛でようと決めているんだ。

不安的神情。そんな不安な顔しないでよ。君ももちろん可愛い気に入りの一輪だから安心してね。





さあさ、面白くない話はここまでにしようか。
夜は長いよ。不安を溶かして、ゆっくり身体の力を抜いて今夜も面白いことをしよう。時間が有り余るとは素晴らしいね。だって考えたって考えったって、どうせ終わりは来ないのだから。ならばこそ、この一時だけ忘れてしまえば良い。



寂しい夜に、
一夜限りの夢の華を。










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