とくべつなひ



 毎月最後の土曜日の夜、僕らは決まって同じ予定を立てる。

「ねぇ、どこに行く?」
「海がいいな。前に行ったとこ。」

 君は必ず僕と一緒に行ったところに行きたい、と答える。ある時は海で、ある時は山。またある時は待ち合わせした駅の名前。だけど、行ったことのない場所の名前は出さない。それが君のルール。


「最後は綺麗な夕焼けが見たいの。」

 そして絶対に最後は夕焼けを望む。曇りや雨の日には見れない、綺麗な夕焼けを最後に見たいとせがむのだ。


「じゃあ昼頃に着くようにしようか。二人でお昼ご飯を食べて、海を見ながら話そう。好きなだけ。」

 それに君は頷いて、明日の予定が決まった。雨だったら中止。夕焼けが見たいという君のためのルール。
 おやすみなさい、と言うその薄くて頼りない唇にキスをひとつして眠りについた。明日は晴れるかな。







 雨が窓を叩きつける音で目が覚めた。外に出ようなんて思わないくらいの土砂降り。
 まだ夢の世界にいる君の頬には涙のあとがあった。少しだけ紅くなった目元が痛々しいけど、君の白い肌に赤が生えて色っぽく見える。
 目が覚めたのか、もぞもぞと身じろぎをする君に声を掛けた。

「おはよう、今日は雨だよ。」


 また死ねなかったね。





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