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きいろいしるしを、



幸せな最期ってなんだろう。
私は、気付けばそればかり考えている。
空を見上げて、雲がゆっくりとゆったりと流れているのをぼーっと見ながら、いつもそんなことを頭の隅っこで考えている。

大好きな人と迎えること。

答えは至って簡単に出た。これが私の、答えだった。


ずっと大好きだった。
私の背丈が、今よりもっともっと小さかったころから、ずっとずっと大好きだった君。
その小さな背中が大きくなっていくまで、いつも傍に居て見守っていた。
隣に居たら、心がじんわり温まってきて、思わず眠ってしまいそうになるくらい、君の隣は安心できる場所だった。
だから私は、君に泣き顔を見られたくなくて。泣きたいときは、必ず君から遠ざかっていた。
けれど君には全て分かっていたんだろう、すぐに私のことを見つけ出して、肩をとんとん叩いて慰めてくれた。

それなのに、君が泣いていても、私は君の肩を叩けなかった。

悔しいんだ。君に頼ってばかりの自分が、憎くてたまらない。自分一人でも生きていけない歯痒さばかりが毎日続いていく。
ただ息をするだけの毎日。
そして、名前も知らない誰かに君の隣を奪われて、私はいよいよ生きる意味を無くした。涙は、もう出ない。泣くことも疲れた。ぐっすりと寝て、疲れを取りたかった。けれどそれさえ叶わないらしい。


だからもう、この毎日に終止符を打ちたいと思う。
君の手で迎える最期がどれだけ幸せか考えて、それが待ち遠しくなった。

きっと君の中に、私を殺めたという事実が、永遠に残り続けるんだろう。
それはまるで服に付いたカレーの染みや、頑固な油汚れみたいに、自分で取ろうとしてもなかなか取れないもので。

一生、君の中に、私という存在が染み込んでいるのだ。


君と私の視線が絡み合う。君の伊達眼鏡越しに見えるその瞳は、いつものようにポーカーフェイスではなく、確実に涙で濡れていて。
段々と私の視界から、色彩というものが薄れていっても、それだけは確実に分かってた。
それは、ただ疑問の色と悲しみの色を浮かべている。
ああ、それでもいい。私を見てくれているこの瞬間が何よりも愛おしく、幸せだ。
私の首にかけられている手が、私の瞳を見るたびギリギリと力が込められて、徐々に呼吸が苦しくなってくる。その手に溢れ出した涙がぽつり、と落ちて、そこから首元へと伝っていく。それは量を増していき、やがて涙の雨となった。

君を見ていられた10年あまりの歳月は、幸せだったけれどもとても苦しかったと思う。
けれど今この瞬間、私の最期は幸せだったと、胸を張って言えるだろう。
言いたいことはもう何もない。
私はいつも通り、最期の最後まで笑わないけれど、心の中で笑うんだ。


そして私は、「ありがとう」の代わりに、
「侑士」
と掠れた声で名前を呼んだ。


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すいません気分がアレな時に書いたのでほんとすいません(白目



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