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あかいろの、




目の前に、真っ赤な扉があった。
プレートもなく飾りもない、シンプルな扉。
新しい綺麗な扉だ。
俺は周りをちょっと確認してから、そこを開こうかそのまま無視してしまおうか少し迷ってから、好奇心に負けてそこを開いてみることにした。
銀のドアノブをぐいっと捻ると、そこにも赤色が一面に広がっている。
血などではない、濁っていない綺麗な赤色がそこにある。
狂ってしまいそうになるほどの赤色へ、俺は恐る恐る、足を踏み出してみた。

一歩そこへ踏み出した時、ようやく俺は、部屋の中心に誰かがいることに気付いたのだ。


「あら」
「あ?お前、こんなとこで何してんだ」

そう俺が問うと、彼女は答えを口にすることはなく、ただにこにこ微笑んだ。
彼女は俺の知り合いだ。ただ、知り合いなのに名前を知らない。というより、名乗ってくれない。何度訪ねても、笑顔でそれを返すだけで、答えてくれないからだ。
だから、俺はもう彼女の名前に関しては諦めた。当の本人がこの調子ではどうにもならない。

それよりも、今はこの部屋のことについての方が重要だろう。
何故、彼女が此処に居るのか。それと、俺がここに来たのか。

「・・・あー、じゃあ内容を変える。ここは何処だ?」

俺がそう言うと、彼女はちょっと迷った素振りをしてから、答えてくれた。

「此処は、私の心の部屋」
「・・・心の?」
「そうね。正確に言うと、私の心情・・ってとこかしら」

心情。この赤い部屋が、彼女の心の中・・らしい。
赤というのは、色々な解釈ができる。愛の色、燃える炎の色、危険を感じさせる色、狂気の色、はたまた人間の血の色まで。
だから、彼女の心情がどうなのか、俺にはさっぱりわからない。
いくら考えても、何年一緒に居ても、さっぱり分からないのだ。

「さて、私は今どう思ってるでしょう?」
「・・・んなもん、俺にわかるわけねえだろ」
「まあ、そうよね。そう簡単に分かってもらっちゃ困るもの」
「・・俺に知られたら困るのか?」
「前までは、そうかも。けれど今は・・・」

そう言って、彼女は黙ってしまった。
その先を言う代わりに、少し困ったように微笑む。

「あ?なんだよ、今は・・・どうだってんだ?」
「・・・・じゃあ、最終ヒント。私の今、一番したい事」

・・・一番、したい事・・?
赤から想像できる行動と言われても、簡単に想像はできない。とりあえず、穏やかな事ではないということは分かるのだが。
思いつくものと言えば・・少々物騒だが、殺人・・・といった類のものぐらいしか思い浮かばない。それか火事。
しかし、彼女がそんな物騒な出来事を起こしたいと思えるはずがない。彼女はいつでも陽気で明るく、しかしどこかミステリアスな雰囲気を持っている。冗談以外では人を悪く言わないし、きっと悪意を持つことなどそうそうないだろう。

だとしたら、他に何があるんだろう。

考えるのを諦めようとした時、時間切れを告げるかのように彼女が口を開いた。

「あなたには分からないと思っていたわ。予想通りで安心した」
「んだよそれ。俺が馬鹿だって言ってるように聞こえるぜ」
「まあ、そういう意味合いもあるかもね」
「お前ッ・・」

そう間に受けないでよ、と彼女は笑った。

「もう、いいよ。特別に答えてあげるから」
「い、いいのか?」
「言っておくけど、静雄だけに答えられることだから。他の人間に教えても意味を持たないから、あなただけに答えてあげるの」

彼女は部屋の中心から、徐々に俺の元へと足を進めてきた。じりじりと焦らすように、ゆっくりと近づいてくる。その表情が、どこか憂いを帯びた笑顔をしていて、俺は思わず目が離せなくなった。
俺の数センチ前に立った彼女は、今まで見たこともないような表情でこう言ってのけた。


「この赤は、愛の色。激しくて危険な愛の色なの。これで、もう説明は結構よね」


さあ、激しい恋をしよう。
その時は、私の名前を教えてあげるから。



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赤色は好きですね。
なんでってボルカノさんの色だかr(ry



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