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ねこ。





吹雪が容赦なく、身体に叩きつけられるような真冬の夕方。
ナルセスが空気が痛いと感じる程の寒さだった屋外から家へと帰ると、リビングのソファーには既にネーベルスタンが帰宅していた。ソファーの前にあるテーブルの上に買い物で買ってきた荷物を置いて、マフラーと手袋、耳あてを取ってコートを脱ぐ。
ナルセスに気付いたネーベルスタンにおかえり、と言われたので適当に返事をする。
纏わりついていた粉雪を手で払い、ナルセスはふとテーブルの方に目を向けた。
今まで気がつかなかったが、ネーベルスタンの膝の上に、何か別の生き物がいると気付いた。

「…なんだそれは」
「ああ、途中で拾ってきたんだ」

覗き込んでみると、まだ手のひらぐらいの子猫が、ネーベルスタンの腕の中におさまっていた。猫のことはよくわからないが、なんとなく警戒しているように見える。腕の中で暴れている限り、ネーベルスタンが気に入らないのだろう。まあ妥当だ。
ナルセスは、動物は嫌いではない。好きというわけでもないが。だがこんなに幼いのにこの寒い中へ放り出され、孤独になっていたという事実に、悲しさや空しさを感じた。
隣に腰かけると、ナルセスを見かねたネーベルスタンが子猫を差し出してきたので、ナルセスはゆっくりとそれを抱きかかえる。
冷えていた手に子猫の暖かい体温がじんわりと伝わってきて、とても心地がいい。まるで、肌触りの良い湯たんぽを抱いているような感覚だ。
くりくりとした大きな瞳で見上げられて、思わず笑みを零した。

「案外かわいいものだな」
「お前、動物好きだったか?」
「別に好きなわけじゃない。ただ悪くはないと思っただけだ」

さらり、と子猫の背中を撫であげると、その手にすりすりと擦り寄ってくる。どうやら懐かれたらしかった。

「…俺には懐いてくれなかったのに、なんでお前には懐くんだ…」
「ふん、近付きがたいオーラでもでているんだろう」

それに関しては自覚があったのか、ネーベルスタンは少しうな垂れた。仕事では厳格な性格で通しているし、普段も眉間に皺を寄せていることが多いので、それが伝わっているのかもしれない。
しかし、そういうことならこいつも同じじゃないのか、と思ったのだが。

「……」

猫の性格とナルセスの性格を脳内で比較すると、なんとなく納得できた。

(似ているからか…)

猫耳を生やしてもさほど違和感がないであろうナルセスをじーっと見ていると、視線に気付いたのかナルセスがネーベルスタンの方に顔を向ける。視線は相変わらず鋭いが、猫に感化されたのか、いつもより丸い。

「何だ?お前も触りたいのか?」

そう言って猫をネーベルスタンに差し出す。だがネーベルスタンはその『猫』には触れようともしない。

「俺が触りたいのはこっちだな」

ネーベルスタンはすっ、と手を上げたかと思うと、それをナルセスの頭へと持っていった。柔らかい金髪が、ネーベルスタンの大きな手をするりと抜けていく。
ナルセスはしばらく面食らった顔をしていたが、やがてその手をふりのけようと片手を伸ばした。心もち少しだけ、顔が赤い。

「お前!私が猫だとでもいいたいのか!離せ!」

しかし引き離そうにも、力が違いすぎる。ネーベルスタンが力を入れると、ナルセスがどれだけ力を入れても、びくともしない。

「こ、の、筋肉馬鹿が…!」
「別に変わらないだろう、猫もお前も」

簡単にナルセスの手を退けて、ネーベルスタンはまたナルセスの髪を弄びはじめた。ナルセスはしばらく抵抗していたが、もうあきらめたのか抵抗せず、また膝の上に丸まっていた猫を撫でる。
しばらくそうしていると、ナルセスはいつの間にか寝息を立てて眠っていた。連携して、ナルセスに撫でられていた猫も丸くなって眠っている。口ではああ言っていたが、嫌ではなかったのだろう。

「やっぱり同じようなものだな」

1人と1匹(2匹というべきか)を見比べて、ネーベルスタンがそう呟く。布団をかけてやってから、ネーベルスタンは夕飯の準備にとりかかった。





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このサイト内では初ベルナルですね。
ベルナルもすっごく好きなので書きたいと常々思ってるんですが・・・ネタがなあ・・・(白目)
にゃるせすさんかわいい。




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