02
それから、なんとか手は引き剥がしたが、そのまま強引に相生の家まで連れて行かれて、現在5畳はあろう玄関に私達は立っていた。
少しご無沙汰だったが、相変わらず憎たらしいほど広くて豪華な家だ。
二階に上がり、相生が父とそのパソコンについて訪ねたところ、既に部屋へ届いているらしい。
相生は小さい子供のようにはしゃいだあと、私を連れて時速70kmほどのペースで室内を走り回って部屋へとダッシュで向かった。こいつは今年で16になる人間ではないのかもしれない。
息を切らして部屋に入り込むと、15畳ほどの部屋の真ん中に、大きなダンボールが鎮座していた。恐らく、この中身がそのパソコンというものなのだろう。
相生がそのダンボールに駆け寄って、ガムテープを乱暴に引き剥がして封印を解いていく。中から出てきたのは、四角形の妙な形の物体。
「これが・・・パソコン?」
私が呟くと、相生はそれをテーブルの上に置いた。続いてパソコンから伸びていたコードを掴むと、部屋の壁にあるコンセントにプラグを差し込んだ。続いて別のコードを掴むと、その先端にはよく分からないものがくっついている。
凹凸のような形状をしたそれを、それと同じ形のコンセントに差し込んだ。
「何それ?」
「LANケーブル。パソコンをインターネットに繋ぐ時に必要なんだ」
それだけ言って、そいつはまたさっさかと準備を続ける。
LANケーブルなるものを繋ぎ終えて、マニュアルを取り出してからボタン(恐らく電源ボタン)を押した。
ブオーンと音が鳴り、画面が明るくなる。しばらく経つと、画面に何か文字が表示された。複雑な文字の羅列が並んでいて解読不能である。
続いてパっとその文字列が消え、何やらカラフルな画像が映し出される。
『Windowx XP』。それがこのパソコンの名前なのだろうか。
「XPっていうのはOSだよ。この画像はWindowsのマークだな。OSってのは、このパソコンはWindowsっていうシリーズのパソコンで、これはその2作品目・・って感じの意味だ。
ちなみに、このXPの前のOSは98っていうんだ」
「さらにこれはMicrosoftが作ったパソコンだけど、他にもMacが・・・」とか言い始めたが、どうでもいいので聞き流して、私はそのパソコンの画面に集中した。
しばらくそのWindowsのマークが映し出されて、それから全体が青っぽい画面に切り替わった。
どうにも忙しい機械だ。さぞかし高収入に違いない。
『ようこそ』と表示され、再び画面が切り替わる。青空と草原という、爽やかの代表といった背景に、インターネット・ごみ箱などの小さいアイコンが画面に整列している。
と、それを珍しそうに眺めていた時、いきなり画面が真っ黒になった。
「?真っ黒になったけど」
「な、何だこれ?マウスも反応しないぞ」
何事かと頭の中にクエスチョンマークを二人で同時に旋回させていると、左上端にぱたぱたと文字が表示されだした。
始めはまた解読不能な文字列だったが、次第に解読できる、人間の言葉に変換されていく。
そして、日本語で、はっきりとこう表示された。
『エラー:ホストが認識できません
IPアドレスが認識できません
サーバーからの反応がありません』
何やら小難しい単語の存在が否定されたあと、一番意味深な文字が表示された。
『 位置情報が検出できません 』
それがしばらく表示されて、それから『END.』と表示され、パソコンの電源がぷつりと消える。
「・・・・・・・・・・・・・・」
二人分の3点リーダが並ぶ。
何が起きたのか理解できない。ひとまず、このパソコンに問題が起きているようだ。
相生はいつもと違った小難しい顔をして、もう一度パソコンの電源ボタンに手をかけた。
「こういう時は再起動するんだ。もしかしたら普通に起動するかもしれない」
そういってポチリと電源ボタンをプッシュ。再度、先ほどと同じ展開で画面が移動を続ける。
しかし、あのメッセージが表示されて、再び振り出しに戻ってしまった。
何度やり直しても、同じくエラーの3文字で振り出しに戻される。
「うーん・・・」
相生は、考える人のポーズで悩み始めた。
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普通のパソコンはこんなことないと思いますが、うん、仕様です(白目
オリジナルは設定をひねり出すのが楽しいなー。時々ぱっと脳内に浮かんでくる。
けど大抵はちょろっと書いて放置。まあ、よくあることです・・よね・・
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