なんだか小難しい話を、目の前にいた青年から小一時間聞かされ……聞かせてもらった。曰く。
「私にそっくりな人間と知り合いだったから、倒れてた私を見てびっくりなさったと」
「そう、だね」
「そして私は風の中級精霊で、以前の記憶は全て無し。弱っている所で貴方にマナを分けてもらい、そのまま直接使役されている仲である、と」
「たぶん、そうだね。あと、僕のことはジュードって呼んでよ。ジュード・マティス」
青年はにこりと柔和に笑う。襟足の眺めな黒髪に、微睡むような蜂蜜色の瞳。見つめていたら眠くなってきた。
察したのか頬をぺちぺちされた。
「ふがっ……ではジュードさん」
「は、はい」
「経緯はどうあれ、直接使役の間柄に変わりありません。不束者ですが、どうぞよろしく」
「ちょ、だから直接使役ってどんなものなの!?」
「何って……ねえ?」
前世の記憶なんて一切ないが、物事の分別くらいは分かるらしい。うら若き(推測0歳)が口にするにはあまりに刺激的な言葉に、顔を逸らして頬を赤らめる。年齢のわりに純情な青年は、オロオロとしばらく騒いでいた。
なんだか、生まれたばかりの私より純粋な気がした。
'140610
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