おおよそ平凡とは言い難い人生だったと思う。訳のわからない運命に振り回され、数え切れないほどの命を奪い、悲しいほどの別れを経て、結局は私も同じ道を辿っている。
仲間たちは辿り着けただろうか。全てが始まったあの地へ。審判の終わるあの場所へ。果たして願いは届けられただろうか。
私にも、もう時間が無いらしい。けれど代償に蝕まれた体はぴくりともせず、私はただ心を静かに保つしかなかった。挫けた瞬間に全身が黒く染まるだろう。なんとしても耐えなければ。彼らがカナンの地に到達し、審判に打ち勝つまで。
やがて、一瞬の無音に包まれた直後、世界が白く染まった。温かな涙が頬を伝う。ああ良かった。きっと間に合ったのだ。安堵に浸りながら、私は静かに体を受け渡した。どうか私の大切な人たちが、笑っていられる世界でありますように。
「ーーユーリア! ユーリア! ねえ、起きて……!」
「ううんうるさい……まだ眠いもうちょっとだけ……」
「ええっ!? 待ってよ、ていうか無事だったんだねユーリア、良かった……!! みんな心配して、」
「え? いやその、ていうかどなたでしょうか」
「え」
「あなたは」
誰ですか?
じとりと睨んだ蜂蜜色の瞳は、丸々と見開かれた。
'140610
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