「ウィリスの服、すっごくキレーだよね!」
ぎくり、と、こちらに背を向ける白衣が大げさに跳ねた気がした。お髭の人に連れられて遊びに来たエルちゃんは、青少年の波立つ心など露しらず、かわいらしく首を傾ける。
「その服って、どこで買ってるの? ジュードのセンス? それとも、自分で作ってるとか?」
「肌だよ」
「えっ?」
エルちゃんが目を瞬かせるのと同時に、向こうの白衣がぴたりと固まった。風を操って資料を弄んでみても反応がない。
「えーと、私もよくわからないんだけど、いつの間にかこれを着てたんだよねぇ」
「そーなの?」
「そーなの。だから今、人間でいう全裸なんだなぁ」
「ぶはっ!!」
白衣から伸びる腕が机に追突して鉄板がひしゃげた。机大丈夫かなぁ。エルちゃんは頬を赤らめて、心なしか声を潜める。
「へー……セーレーカイって進んでるんだね……! ジュードとかに見られて恥ずかしかったりしない?」
「!!!!?」
「うん? まあ別に」
これが精霊的には普通だし。羞恥心の欠片もなく頷けば、いよいよ沈黙した青年の肩を、髭の人が慰めるように叩いていた。人間は忙しい。
'140623
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