ビタースイート(闇)




真っ白なテーブルクロス。最後の一枚を整えて一息。
整った店内を見渡せば、いつも自然と頬が緩む。
今日もたくさんのお客様が訪れて、そして帰って行った。
明日も喜んでいただけるように、閉店後も店の手入れは欠かせない。



「お疲れ様です」
「支配人!」



背中から聞こえた柔らかい声に振り返ると、想像した通りの人物。

「今日も綺麗ですねえ」
「ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ助かりますよ」

休憩しましょうか、その言葉に大きく頷いた。





ホールの裏、小さなテーブルの上にはランプが一つ。
ゆらゆら、ゆらゆら、蝋燭の炎が揺れる。


「どうぞ」
「ありがとうございます………支配人?」
「はい?」

カップの中には真っ黒な液体。
いつもは紅茶を出してくれるはずなのに、今日は何故かブラックコーヒーだ。
少し待ってみても、砂糖やミルクを出してくれる様子はない。
苦くないのだろうかと、試しに一口飲んでみるが。


(にが…………)

中身はやはりブラックコーヒーで、思わず眉根が寄ってしまう。
そんな様子を見られていたのか、支配人は口元を隠してくつくつと笑った。


「申し訳ありません。貴女が可愛らしいものですから、つい…意地悪をしてしまいました」


そう言って眉を下げた支配人の手には、いつの間にか一枚のお皿。

「え、…わあ…!」

綺麗に盛り付けられたガトーショコラ。
お客様に出すものと同じそれは、こっそり残しておいてくれたのだという。

「内緒ですよ?」
「はい!…ありがとうございます、支配人」
「いえいえ、こちらこそ」



bitter sweet black



(…支配人、やっぱりミルクを…)
(ふふ、かしこまりました)



―――――
ちょっとSなギャルソンさん
気持ちバレンタインで
そして変換が…ない…!



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