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見せびらかしてやるのも、それはそれでいいと思った
ただ、いつものことではあるけれど昼休みの時間が合わなかっただけ
僕は一人執務室でお弁当箱を取り出す

「いただきまーす」

彼女から手渡されたもう一つは、今頃紙袋にくるまったまま清掃員に回収でもされているのだろう
一生懸命にお弁当を作るナマエを想像して彼女にちょっとは申し訳なく思うけど、ひどく苦々しくも思う
僕以外のためにつくったのなんて、いらない

ノボリは今日も寝てないんじゃないかな
朝礼の時に合わせた顔には昨日よりもさらに深く隈が刻まれていて、とても見られる顔じゃなかった
僕らには二徹なんてざらにあるはずだけど、それほどまでに彼女がいないことが堪えているのか
まあ僕には関係ない


「あれ、クダリボス、今日はお弁当なんですか?」
「そう、おいしそうでしょ!そんな目で見たってあげないから」
「珍しいですね、いつも栄養食みたいなへんちくりんのやつやのに…さては彼女でもできたんちゃいますか」
「えへへー」

書類を抱えて執務室に入ってきたクラウドがいぶかしむように言った
色とりどりのおかずがきれいに詰めてあるお弁当を、まさか僕が作ったなんて思わないだろう

彼女、という甘やかな響きが僕の耳を侵す
彼女…彼女かあ
どこか幼くて無垢なその言葉は、僕たちの関係を表すことができるだろうか?

クラウドは僕のデスクにどさり、と音がしそうなほどの書類を積んでさっさとどっか行っちゃった
小さくため息をつく
今日は残業してやるつもりはない

卵焼きをひとつ、口に放りいれた
ふわふわで、ほんのり出汁の効いた、優しい味だ
自然と笑みがこぼれた







終にナマエは二日間、帰ってくることはありませんでした
ライブキャスターを握りしめ、絶えずボタンを押し続けたところで、通話が繋がる気配はありませんでした

ああ、ああ!わたくしのナマエ、けがなどしていないでしょうか
どこかで泣いているのではないでしょうか
食事はきちんと摂っているのか、どこにいるのか、何をしているのか

皆目見当がつきませんでした



  わたくしは、ともすれば、愛しい彼女のことを何も知らないのではないか


自らの内に沸いた恐ろしい考えを否定するように、首を振りました
いいえ、ナマエはわたくしの妻で、わたくしは、彼女を愛している
それは、確かなことです


わたくしはボタンを押す手を止め、新しい番号を打ち込みました
外聞を気にかけ、手段を選ぶ余裕は、とうの昔になくなっていました



「もしもし、そちらにナマエという女性の宿泊はございませんか  



ナマエ、わたくしが、どこへだって迎えに行ってさしあげますからね
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