「ここらへんに適当に座ってて」
ぱちん、とクダリくんが電気をつければ、当たり前のことだけどそこはノボリさんの部屋とまったく同じ間取りだった
置いてあった二人掛けの白いソファに優しく降ろされる
ふわりと私の頭を撫でてから、クダリくんはキッチンに行った
「ナマエはコーヒー飲めるっけ?」
「あ…ごめんねクダリくん、私がやるよ」
「いいから!ナマエは座ってて」
慌てて立ち上がろとしたけど、腰が抜けているのか、まだ足に力が入らなくて、私は言われた通りにソファにいるしかなかった
…クダリくんの家に入るのは、初めてかもしれない
できたらこんな形でお邪魔したくなかった
少し部屋の中を見てみれば、双子だからなのか家具の雰囲気や配置もどことなくノボリさんの部屋に似ていて、苦しい
「はい、砂糖とミルクはいる?」
「あ、ううん…ありがとう」
両手にほんのり湯気のあがるマグをもってキッチンから戻ってきたクダリくんは片方を私に差し出して、私の隣に座った
受け取ったマグはじんわり温かくて、冷たい指の先に熱を伝えてきたけど、やっぱり震えはおさまらなくて、水面には細かな波紋が広がる
私は一口コーヒーを口に含んでから、マグを慎重にローテーブルに置いた
温かいコーヒーが冷たい喉をつたっていってからっぽの胃に入っていく感覚が、何ともいえず気持ち悪い
隣にいるクダリくんは何を話す訳でもなく、何度かコーヒーを口に運んで、ただ座っていた
時間だけが確かに流れていく
何もできない、何をすればいいのか、私は、わからない
しん、と静まり返った空気を先に切り裂いたのはクダリくんだった
「……話すのがつらかったら無理に話さなくてもいいんだ、ナマエ、でもね、」
「…」
「…我慢はしなくていいんだよ?」
「…」
「ナマエが人より我慢強くて頑張りやさんなの、僕知ってる」
「…」
「でも、ナマエはもう十分頑張ったんじゃないかな」
「…」
「僕にはどうしてあげることもできないかもしれない、けど、何があっても僕は絶対ナマエの味方だから」
だから、ノボリがきみに何したのか、教えて欲しい