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『これは愛じゃない』はロシアの作家セルゲイ・ドヴラートフの著作『わが家の人びと』の全13章のうち第11章『妻のレーナ』の副題です。
現代ロシアではかなり読まれている作家ですが、日本ではあまり有名な作家でも本でもない(と思う)ので、読んだことがある人はおろか知っている人もあまりいないのではないかと思います。難解で堅苦しいと思われがちな露文学においてかなり軽く読める文章です。作者本人を取り巻く家族との関わりを記した自伝的小説で、第11章は作者の妻、レーナとのエピソードになります。

この中編では作者を夢主、レーナをインゴとしました。途中途中かなりあらすじは違いますが。

密かなテーマとして、他人との愛の成立の必要条件なんて大げさなものをこっそり掲げていました。知っていることが愛に繋がるのか、何を知ることが愛に繋がるのか。
『インゴ』という記号は確かに彼とイコールで結ばれるけれど、サブウェイボスの肩書きも金糸の髪もネイビーの瞳も彼の淹れるコーヒーが美味しいことも、全部寄せ集めて固めてもそれは『インゴ』を表せない。むしろインゴに関する情報はいくらでもあるのに、その情報が邪魔をする。情報を愛する訳でも記号を愛する訳でもないからです。なら何が必要だったのか?
そんなちょっとした記号論でした。答えは残念ながら当連載では提示できませんでしたが、愛の成立に悩む気持ちが少しでも書けていたらいいな、と思います!


およそ8ヶ月ののろのろ運行の上最後は駆け足になりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
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