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ほんの出来心だったのです。



私はユウキ君の部屋にお邪魔して、ごろごろしたり、本を読んだりしていた。
最近はユウキ君の優しさに付け入って、彼の部屋に入り浸っていた。可愛いな〜ユウキ君。可愛い可愛い!でも、そろそろ耐えられない。

なんていうのこの放置プレイ。

雑誌に飽きたので脇に投げ捨てた。彼は私に背を向けて、グラエナの毛並みを整えている。でも、もうその毛はつやっつやでこれ以上は何をしたってもうなーんにも変わらないと思う。後ろからグラエナの毛を梳いてみた。思った通りさらさらで気持ちいい。グラエナも気持ちよさそうにぐるる、と鳴いてくれた。でも、ユウキ君は無反応だった。

いつもならここで「綺麗でしょう?」とか「やってみますか?」とか優しい言葉を掛けてくれるはずだ。
なんだか悲しい。今日も当然のように部屋に来てしまったけど、もしかしたら彼の優しさに甘えすぎて嫌われてしまったかもしれない。だよね、一日おきに来るとか普通ドン引きだよね。

…でも!ここで引き下がるわけにはいかない!


「ゆーうき君?」


私はぽんぽん、と彼の肩を叩いてさも何かを期待させるような声で名前を呼んだ。

肩に置いた手の人差し指を立てて。

なんとも原始的な、子供じみた悪戯だったが、私は彼がこっちを振り向いてくれるだけで満足だった。私の悪戯で、笑ってくれる彼の顔がどうしても見たかった。



思惑通り彼は振り向いた。


…人差し指を突き出した、私の手を掴んで。

もちろん私の人差し指アタック(仮)は不発に終わって、意外と大きいユウキ君の手の中に納められた。


「…嫉妬、したの?」


グラエナに。彼はふわりと笑って私を引き寄せて、グラエナがいた位置、あぐらをかいた足の上に私を座らせた。
ば、ばれてた!人差し指アタック(仮)ばれてたよ!恥ずかしすぎるううう!!
ていうか近い近い近い近い!さっきまで見たいと思っていた笑顔は目の前にあって、思わず俯いて目をそらしてしまう。
でもユウキ君が空いてる方の手で私の顎を引き上げたので、もう一度彼と目が合った。顔が熱い。今もしかして私変な顔してないかな?!

熱くて熱くてぼーっとする頭で必死にそんなことを考えていたら、ちゅ、という音がして唇に柔らかい感触がした。ユウキ君の顔がすごく近い。
時間差でキスを落とされたのだと理解する。それがわかったら、顔だけじゃなくて耳とか首とか、体中が熱くてしょうがなくなった。涙目でわたわたする私をユウキ君は楽しそうに眺めている。


「ナマエ、」


ふいに私の名前を呼んで、頬に人差し指をたてるユウキ君。


「かーわいい」



ああ、彼には敵わない。

(可愛いって言ったり、男の部屋に一人で来たり、
全然意識されてないのかと思った)
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