暇だ。ひま。ヒマ暇暇ひま。
「グリーン、またサボってるの?」
ふいに背後から声を掛けられて、ゆっくり振り向いた。
「ここにいるってことは、お前も立派なサボりじゃん。」
「いーの。挑戦者なんてぜーんぜん来ないんだもん。」
そう言いながらナマエは俺の座るソファの隣に腰かけた。
まあ、ここは最後のジムだし。ここまで来れる奴なんて日に何人もいるわけじゃない。
でも、俺を更に暇にさせてるのは間違いなくナマエだった。
隣に座って何をするでもなくただぼーっとしているナマエにしばらくしてから慌ただしい訪問者が来た。
「ナマエさん!やっぱりここにいたんですか!!」
探したんですよ!ジムトレーナーの一人が息を切らしながら言った。ナマエはごめんごめん、なんて気のない返事をしながら大人しくそいつに連行されていった。
ナマエは、強い。
その上絶対に挑戦者に手加減なんてしない。
あいつがここのジムトレーナーになってから、確か俺は一回もジムバトルをしていなかった。そろそろ腕もなまってるんじゃないか。俺としては、バトルは好きだし、挑戦者がいなくてもジムにはいなくちゃいけないので(まあこうしてサボったりたまに抜け出したりもしているわけだが、)暇で暇で、なるべく来た奴とは戦いたかった。
でもだからって俺に絶対に挑戦者を回そうとしないナマエを怒っているわけじゃなかった。だって、
「終わった終わったー」
「なんだもう終わったのか、はえーな。てかまた来たのかよ。」
「だって弱かったもん。」
そういいながら絶対に顔をこっちに向けないように隣に座るナマエの顔が真っ赤なのも、俺に速いと言われて顔を綻ばせて喜んでるのも。上ずる声を必死に抑えて冷静を装ってるのも、美人やチャラチャラした女の挑戦者は特に容赦なく叩きのめしてるのも、
全部知ってるから
(お前を見てるのは楽しいから、特別に許してやる。)