Clap
ありがとうございます!



「ねえちゃん、其れくらい自分で出来るから!ね?」
「でも、私に出来ることがしたいの!」


 私はフレディのパジャマに手をかけ、脱がそうと試みる。けれどもフレディは頑なに拒絶した。
 汗で濡れたパジャマを替えるお手伝いと、身体を拭くよ、と言えば何とも言えない顔をされた。でも、私に出来る事はさせて欲しかった。此れだけは譲れない。
 困った顔で私を見詰めるフレディ。どうしてそんな顔をしているのか私には見当もつかない。


「だから、ね?お願い!私にお手伝いさせて?」


 じっと見詰めて懇願すれば、フレディは項垂れて溜め息を溢した。


「……じゃあ、お願いします」
「うん!任せて!!」


 フレディの許しを得て、私はフレディのパジャマに手を伸ばした瞬間、腕を掴まれた。


「あ、でもパジャマは自分で脱ぐから」


 一瞬、心臓が乱れた。其の視線に私は呼吸をする事も忘れて動けなくなる。
 フレディは身体を捻り、私に背を向け脱ぎ出した。何時の間にか大きくなった背中。あんなに小さくて可愛かったフレディは何処にいってしまったのかな。
 そう思えば、無意識に伸びる手。気が付けばフレディの背中に触れていた。


「どうしたの?」
「え!?」


 フレディの声にはっとする。気だるげな視線にまた心臓がバランスを崩す。


「な、何でもないわ!せ、背中拭くね?」


 私は誤魔化すために、慌て濡れたタオルを手に取り、ベッドに腰掛けた。そしてタオルで背中を拭けば、フレディが身を捩る。


「あ、ごめんね?擽ったかった?」
「……ううん、大丈夫。少し、びっくりしただけ」


 私は丁寧にフレディの背中を拭く。あれだけ高かった熱は下がり、今は微熱。良かった、と安堵する。
 ぐったりとしたフレディを前にして、ただただ怖かった。急に目の前が真っ暗になった。
 フレディがいなくなってしまったら、などと不吉な考えが過れば底知れぬ不安に襲われた。溢れ出しそうになる感情を、私は息と共に不安を吐き出そうと試みる。
 ただの風邪だった。でも、風邪だって侮れない。そんなの大丈夫だという理由にはならない。私は俯き、タオルをぎゅっと握り締めた。


「ねえちゃん、どうか、した?」


 其の声に顔を上げればフレディが首を傾げて小さく微笑んだ。ぎゅっ、と胸が痺れるように痛む。不思議な感覚に支配されながら、私は首を振った。


「何でもないわ、ごめんなさい。拭き終わったから前を向いて?」
「う、……ん」


 フレディはゆっくりと此方に向いて私を困ったように笑った。


「でも、手が届くから自分で拭くね?」


 私からタオルを奪い、フレディは自ら身体を拭く。何も出来ない私はただぼんやりと其の光景を見る事しか出来ない。


「あー、さっぱりした!ありがとう、ねえちゃん」


 手渡されたタオルを握り締め、フレディを見詰める。私は近くに用意していた替えのパジャマをフレディに渡した。
 私の中の不思議な感覚が増していく。フレディは新しいパジャマを羽織り、ボタンをかけた。


「心配かけて、ごめんね」
「……え?」


 優しく頭を撫でられ、私は驚いた。大人びた表情に、微笑みに。私の知らないフレディを見付ける。


「オレはもう大丈夫だから、そんな顔、しないで?」


 そんな顔って、どんな顔?私は判らない、でも、訊ねる事が出来なかった。だから、私はフレディの肩に頭を乗せた。


「っ!ねえちゃん?」
「……まだ、熱ちゃんと下がってない」
「う、うん。でも寝れば元気になるよ?」


 私は勢い良く立ち上がり、フレディの肩を押してベッドに沈めて布団を被せた。


「っ、うわぁ!」
「早く寝て!」
「ええっ!?」


 私はフレディのパジャマとタオルを拾い上げ抱えた。渡し忘れていたパジャマのズボンは其のまま置いて私はフレディのおでこに触れる。


「早く、良くなってね?」
「きっと朝になったら元気、だよ」
「うん、おやすみなさい」


 私はそっと髪を撫でてフレディから離れる。目を閉じるフレディを確認して私は部屋を後にした。




キミとボクの日常L



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