東方仗助と私の関係は所謂"腐れ縁"というやつである。

彼の母親と私の母親が大学の先輩後輩かつ親友という奇妙な関係だったらしく、大学を卒業しそれぞれ結婚し(といっても彼の母親である朋子さんは未婚らしい)子供を産んだ今でも彼女らの関係は不思議と衰えることがなく――その結果私と彼は兄弟のように育った。
彼の母や彼の祖父が仕事などで家に帰るのが遅くなる日には彼が私の家に泊まりに来ることもあったし、反対に私の両親が仕事の都合で家を空ける日があれば私が彼の家にお邪魔させてもらうこともあった。
そんなこんなでお風呂も一緒、寝るのも一緒、遊ぶのも一緒という生活を私と彼は10年近く続けてきた。それは17歳になった今でもあんまり変わっていない。

「おじゃましまーす。」
「杏胡ちゃん、いらっしゃーい。」

もはや見慣れすぎてしまった扉を開ければ朋子さんの声が奥から聞こえる。廊下を進んでリビングに顔を出せばちょうど夕食の準備をしているらしい朋子さんの背中が見えて、私は「手伝います。」と一声かけて、荷物を部屋の隅に下ろした。朋子さんの隣に立って手元を覗き込んでみれば刻まれた玉ねぎと、ひき肉のトレーが見えて「ハンバーグですか?」と問えば「そうよ」と笑顔で朋子さんが頷いた。そして私は包丁を取り出してまだ刻まれていなかったにんじんを切っていく。

「いつも手伝ってくれてありがとうね。」
「いえいえ。」

働かざる者食うべからずですから、なんて言って私が笑えば朋子さんは「じゃあうちの仗助は夕飯なしね。」と言った。同時に「オイオイ、そりゃねぇよ〜」なんて声が聞こえて、振り返れば仗助が返ってきたところだった。

「おかえり、仗助。」
「おう、今日泊まるのか?」
「うーんとね…実は……」

両親二人で1カ月間の旅行に行きました、なんて小さな声で私が呟けば仗助の緑色の綺麗な目が見開かれる。ちょっと居た堪れなく思いながら「なので、1か月よろしく」と続ければやがて仗助の目が驚きから喜びに近い色に変わたような気がした。同時に彼は私を元気づけるかのようにぐしゃぐしゃと頭を撫でた。顔を上げれば「俺の代わりにお袋の手伝い頼むわ」と言って仗助が笑ていて、ちょっとだけ照れくさくなった私は慌てて顔を伏せた。


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