黒髪が風に舞って、揺れた。





――新しく仲間になった。

――よろしくお願いします。

リゾットに紹介され、頭を下げた少女は酷く細く…傍から見ればか弱い少女。
一体何故こんな奴が? そう首を傾げていれば『スタンド使いだ。』とリゾットが告げた。

"スタンド使い"
その言葉はもう耳にたこができるほど聞いた。なにせ自分も同じ"スタンド使い"だからだ。
この世界でただの人間であるのなら、彼女は生き残れないだろう。
だが、スタンドがあるのならそれは覆る。

その精神力の強さと比例して、スタンドは強くなるという。
見た目はか弱そうでも、スタンドが使えるのならば……彼女の精神力は並々のものではないのだろう。

『出してみろよ。』
『……え?』
『どんなスタンドなのか見せろって意味だ。お前のスタンドが分からないまま、同じ仕事なんて出来るわけがねぇだろ。』

違うか? そう問えば少女の首が縦に振られる。
そして小さな唇が言葉を紡ぐ。

『グリム・リーパー!!』

叫んで、同時に揺らぐ少女の影と自分の影。
レンガの地面の上で影はまるで生きているかのように蠢き、そして姿を変えて立体的になる。
実体化した影はゆらゆらと陽炎のように揺れたかと思うとしゅるしゅるとまた形を変え、鋭利な剣のようになる。

『……これが、私のスタンドです。』

もういいですか? そう問いかけてきた少女の額には僅かに汗が滲んでいる。恐らくまだ扱いなれていないのだろう。
もって数分。僅かに操るのが限界なようだ。
それを見たプロシュートが『もういい。』と返答すれば、瞬間彼の前から黒い影が砂のように掻き消え、同時に少女が息を荒げて座り込んだ。

『…スタンド、って扱うの難しい、ですね。』

今はこれが精一杯だと言うかのように肩で息をしながら、少女はそう言って微笑む。

上下に揺れ動く肩は、やはり細い。
服から見える腕も、足も―――細い。




『……なんで、暗殺なんかしようと思ったんだ。』

気がつけば声に出していたらしい。
座り込んでいた少女の黒い双眸が、驚いたかのように見開かれた。


『明らかに不利じゃねぇか? お前より体格のいい奴なんて大勢いる。』

そんな奴に襲われたら真っ先に死ぬ。そう告げれば僅かに少女の顔が歪んだ。
同時に彼女は『分かっています』と答えた。


『分かっていて尚、このチームに入りたいと思ったんです。』
『……死んでも良いのか?』
『それは、皆一緒です。』

いつかは死ぬ。
私も、貴方も、ほかの皆も。

そう言ってのけて、少女は立ち上がる。
足についた土をパンパンと音を立てて払いのけると、彼女はまた口を開いた。


『それに、どうしても叶えたい願いがあるんです。その為には、私はここにいなくちゃいけない。』
『願い……?』

一体なんだ、そう問えば『ここに居なくちゃ叶えられないこと。』だと少女は言った。

それ以上、何も言う気はないらしい。
ただ『空が綺麗ですね』なんて話以外口にしなくなった少女に『そうだな』と返して、プロシュートは懐からタバコを取り出し、火をつける。

そして少女と同じように空を仰いだ。




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