突然、肩に何か温かいものが触れる感触がした。


僅かに驚いてリゾットが肩を見れば見慣れた黒髪が彼の眼界に飛び込んでくる。同時に微かな寝息が彼の耳に届いた。

どうやらコーヒーを飲みながら眠ったらしい。

なんとも器用なことをするものだ、そう思いながら飲みかけのコーヒーが入ったカップを彼女の手から取り上げて、テーブルの上に置く。
同時に飲み干した自分のカップも其処に置いて、彼女を起こさない様に配慮しながらリゾットはゆっくりとソファーから立ち上がる。

ぽすん。

そんな軽い音と共にソファーに倒れた彼女は僅かに身じろぎしたかと思えば、すぐに寝息を立てる。
ソファーに納まる小さな少女の身体を見ながら、リゾットは傍にあった毛布を彼女の身体にかけてやる。
同時に、彼女の頭に触れた。


『Buona notte.』


そっと彼女の耳に囁いて、リゾットは立ち去る。
あとは静かに眠り続ける少女だけが部屋に残されるのであった。






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