「そしたらさ、あいつね」
「えー、嘘!それやばー」
「まじまじ!すげーよなー!」

あーあーあーあー、
あー、煩い五月蝿いうるさい。どうしたらそんなにきゃあきゃあと騒げるものか。ガタガタと電車に揺られながらも例えば第三者が見たのなら、その金切り声をあげるように話す女子高生に人の数倍は冷ややかな眼差しを送っているのは紛れもなく私だ。きっと周りから見たどんな形相をしているのかと、そんな考えがちらと頭に浮かんだが今はそれどころではない。全く一体全体どこからそんな声を出しているものか。そしてもう高校生だろう。何故周りの迷惑について考えない、ここはれっきとした公共機関であろう。

「そこで急にあいつがさ」
「うんうん」
「ぎゅーって!!」

きゃあ、なんてはしゃいじゃって。しかもよりによって恋ばなってやつですか。え、なにこれ。神様の意地悪ですか。最近フラれた私への更なる追い打ちですか。なんて高が女子高生の恋愛話を聞いてこうまで思ってしまう私は相当性格ひん曲がってるなと苦笑した。


「…っていうのが今日あってさー」
「なんだそりゃ、うん」
「え、だってそりゃあんた」

普通場所を考えろとか思わないの?なんて聞いたらあほだろ、と嘲笑つきで返された。オイラならうるせーなぐらいにしか考えないぜ、なんて抜かしやがるあいつは金髪長髪の幼なじみだ。その後例の女子高生らは次の駅で降り、複雑な心境のなか家路についている間にこいつに会った訳だ。調度お互い帰宅の途中だということなので家も近いのでせっかくだから一緒に帰っている、というのが今の状況なのである。

「まさかよお、」
「何よ」

お前まだ旦那が好きなのか、と苦笑された。
とくり。
心臓が鳴る。全くもって何も言えない。そうだ。そうなのだ。赤く癖のある短髪に綺麗な瞳がまだ忘れられない。私はこいつが旦那と呼び慕うサソリがまだ好きなのだ。

「図星かよ、うん」

にやりと口に弧を描くこいつに私はただただ口を開くことが出来ない。顔が火照る、言葉を探そうと目が泳ぐ。するとあいつはふうん、とだけ言うと

「お前新しい恋とかしないの?」
「な、」

そんな、するわけない。それにいきなりすぎるではないか。私はまだ先に進める自信を持てずにいた。あんなにも誰かを好きになれたのは初めてだった。あんなにも誰かを信じたのも初めてだった。初めて、一目で誰かを好きになった。結局は何もかもが私には初めての経験ばかりで、初めて恋というものも知れた気がした。キラキラと輝いたあの日々はもう二度と忘れられない様な、妙な確信と共に私の中に居座っていた。

「なあなあ、」

それに第一、新しい恋なんて相手がいないではないか。嗚呼、もう二度と恋なんてしてやらない。なによ、と呟きながらデイダラに眼を向けるとにやりと笑うあいつがいた。

「なんならオイラと新しい恋、しない」



え。





ここでまさかの展開。





一年ぶりですお久しぶりです。実はまだ生きていました。突然でごめんなさい。何故だか急にまた話しを書きたくなりまして。ただ自分の感情を書きたかったのもあるかと思うんですがやっぱりけじめをつけようと。
中途半端にすみません

20111020