その日はデイダラと二人で森に居た。ここらは人通りも少なく私のお気に入りで私がふらりと訪れるとさも当たり前かのように彼はいつもそこに居る。彼とは特に何かをする訳でもなく木々に腰掛け淡々と会話をする時もあれば、淡く浮かぶ月を眺めるだけで終わる時さえもある。その日もいつものように彼の隣りに座り、雲の多い空を仰ぐ。ふと視線を右に移すと彼の手は白い粘土で綺麗なデフォルメで描かれた鳥を作り出していた。 「そんなに粘土遊びばかり楽しい?」 「遊びじゃねえ、うん」 「私はあんまり好きじゃないけどなー」 お前オイラを侮辱してんのか、なんてデイダラは言ったけど私にはそんな考えは微塵にも無く、ただ粘土なんて幼い頃に少し遊んだぐらいかの物であって実際彼に出会うまでは粘土なんて気に留める事すらなかった物な訳で、そんな物に執着するぐらいなら私を見てよ、なんて少しでも考えている自分に呆れて小さく苦笑した。 「これはオイラの芸術なんだよ、うん」 そう言って自分の芸術について語りだした彼を横目に私には分からないよ、と呟く。アンタもアンタの芸術もね。デイダラはオイラが分からせてやるよ、なんて笑っていて、不覚にもその笑顔にドキリとした。 「じゃあさ、」 「ああ、」 「これからも会えるんだね」 私達の関係は恋人でもなければ親しい友という訳でもないために、あやふやでその関係はひどく脆くどちらかが壊そうと思えばいくらでもなるのだ。それでも繋がっていたいと思う私はきっと彼の事が好きなのだと思い、また自分はこんなにも欲深い人間なのだとぼんやりと考えた。 「当たり前だろ、うん」 少し目を見開いた後へなり、と笑った彼の顔は悲しげに月明かりに照らされていて、それじゃあまた明日ね、と言った私に手を降った彼はぎこちなくまたな、と言った。 次の日、いつものようふらりと向かった先には彼の姿は見当たらず、数日後風の噂でデイダラは里を抜けたのだと聞くと、いつの間にか私の視界は滲んで何もかも見えなくなった。 夢見るという特権 お別れぐらい言わせてよ、 100820 企画:)泣き虫と聾唖様 期限に遅れてしまった上にこんな意味不明文ですみません。 素敵な企画ありがとうございました! |