世界は冷たいと思う。そして汚れている。例えば私が絶望に陥り今にも生死をさ迷う面持ちで騒がしい街中を歩いたとしても誰一人声をかける事すら無く最早存在にすら気がつかないのであろう。否、そう言う私も仮にそんな人間を目にしても声はかけないだろう。所詮は他人な訳で結局のところ自分に関係のないものは無関心なのだ。世界は冷たい。

「イタチもそう思うでしょ?」

薄闇の中、月明かりがイタチの妖艶な顔を照らしちらりと目にしたその表情は長い睫毛を伏せめにしてうっすらと笑みを抱いていた。

「オレはそうは思わないが、」
「どうして」
「では仮にだな、」

オレがその街中で今にも生死をさ迷う面持ちで歩いているお前を見かけたら迷わず声をかけるだろう。そうする事でお前の存在に気がつく奴も居る訳で無関心では無い訳だ。

「綺麗事ね」
「まあな、」

ふんと鼻を鳴らすとイタチはくつくつと笑い始めた。何がそんなにも可笑しいのか、しかし嫌な気は不思議と微塵にも感じず、それは彼が滅多に笑うなんて行為をしないために私にこんな表情を見せる事に驚いたからなのか、

「とりあえずだ、」

お前は人を信用しなさすぎるんだ、とイタチは言ったが私には人を信じるなんて今まで己のみを信じ生きてきた中で皆無に近い行為だ。無理だ、私には。通りすぎる人間全てが恐ろしい、同じ暁のメンバーだってもちろん、あんただって。いつ、私を裏切らないと言いきれる、人間なんて人間なんて、

「世界は残酷だ」
「…知ってるよ」
「だからこそ」

その残酷さの中で見つけた光は最高のものとなる、
そう囁きふわりと笑った彼が去って行く後ろ姿は今夜の明るい満月の月光のためにはっきりと覚えている。あの時だけ、イタチはよく笑っていたわ。


今はもう二度とその長い睫毛を瞬かす事も、あの笑顔をも見せてくれる事もないのね。イタチのおかげで少しだけ温かく見えた世界も今ではやっぱり、

冷たいわ、


涙葬

私の元から消えてしまったね、遺された言葉の意味も知らないままに、


100911 Title:)濁声

わけのわからないものを書こうとしたら本当にわけがわからなくなった。イタチファンの皆様、ごめんなさい