貴方の流れるような茶色の髪が好きだった。包むような優しげな声、冷静、忠実、頼りがいのある存在、とにかく全てが好きだった。

「フー先輩、」

コトリと面を置く音がする。清々しいくらいの青空を見上げれば、先程の任務で付いた嫌気がさすような返り血をふわりと風が撫でる。不意に隣に座る貴方の名前を呼べばどうした、と高すぎでもなく低すぎでもないなんとも言えない穏やかな口調で返ってくる。おまけにさわやかスマイル付きなもんだから私はお疲れ様でした、とか今日の任務は大変でしたね、なんて言えばいいものをなんでもないです、とまるで林檎のように顔を真っ赤にしてはにかむ事しかできないのだ。

「それ二回目だ」
「あれ、そうでしたっけ?」

そんなの本当はわかってる。だって本当に伝えたい事が言えないのだから。それにしても二回目だというのにそれでもさわやかスマイルで返してくれるなんてどんだけお人好しなんだ。いつからだろう、貴方に惹かれはじめたのは。初めて貴方を見て思った事は、固そうな人。とても生真面目で堅実な人。本音を言えば私の余り好きな雰囲気ではない。なんとなく近寄りがたかった。でも何度か二人で任務をこなして行くうちに貴方のさりげない優しさとか絶対的な強さとか知らなかった事を沢山見つけた。それぐらいの時からか、もっと貴方を知りたいと思ったのは。当時はまだその気持ちが何なのかわからず、ただ貴方を知りたい一心だった。

「おいおい、いい加減にしろよ」
「それじゃあもうやりませんね」
「お前やはりわざとか」

五月特有の風が気持ちいい。あはは、と笑ってごまかせば貴方は呆れたようにまた笑うんだ。

ドキン

私の心臓が鳴った。貴方の言葉一つで、貴方の行動一つで、貴方の笑顔一つで私の心臓はこうも五月蝿くなる。

ドキンドキンドキンドキン

嗚呼、私はこんなにも貴方が好きだったのか。貴方が愛しい、愛しい、愛しい。もう伝えてしまおうか。貴方も私も暗部の根だがもうそんなの一切関係ない。例え告白したとしても結果は目に見えている。もうこんな風に笑いかけてくれないかもしれない。だけどもう駄目なんだ。この溢れ出る気持ちは抑えられない。



そして私はまた貴方を呼ぶ

「フー先輩、」




100517 三ヶ月記念企画

題:)あの子とくちづけ、

うわわわわわ!!!すみません!!遅れたくせにこんな謎な文…。うちも紫優みたいに素敵な文が書きたいです。(え)もはやフーではないですが3ヶ月企画ありがとうございました。