夢を見たんだ。どんな夢だったかははっきりと思い出せないがなんだか幸せそうな自分が居た。そしてその中にはあいつの姿も。確か、あいつを見つけたところで調度よく目が覚めた。夢で会っても仕方ないのにな、なんて呟き枕元にある携帯に手を伸ばす。

「なんだ、まだこんな時間かよ」

どうやら早く起きすぎてしまったらしい。カーテンの隙間からはまだ薄暗い明かりが覗いている。仕方なくオイラは眩しいディスプレーを閉じてまた布団に潜り込む。もう5月だと言うのに夜は昼間とは比べものにならないくらい寒い。どうやら当分ここから出られそうにもないな。でもあの携帯の眩しさで目も覚めてしまったし、なによりなんの連絡も入ってない事が頭から離れない。

「あいつが覚えてるはずねぇよな、うん」

何度も確認しても変わらない画面。メールが来る気配すらない。なんとなく解ってはいたがやはりこうも当たり前のように現実に起こると落胆する。今日はオイラの誕生日なのだ。別になにか大金をかけた物が欲しい訳でも無いし、わざわざあんなに遠い所から会いに来てほしい訳でもない。ただ一言でもおめでとう、と言って貰えるだけで充分だった。いつだったか、あいつに最後に会ったのは。いつものようになんの連絡も無くいきなりオイラの家に来たと思ったら

「私、海外に留学に行くから」

などと突如に言い出すもんだからオイラは冗談だろ、と嘲笑した。元々馬鹿なオイラとは違ってあいつは成績優秀だったが過去に将来の話しをした時もそんな事は言っていなかったし、ましてや留学だなんて全く実感が湧かない。とにかくオイラには冗談にしか聞こえなかった。そんなオイラを見て呆れたのか、なんなのかあいつは何も言わずにただどこか儚げに微笑むだけだった。その後すぐあいつが居なくなった。またいつか必ず会おうね、と一言手紙に書き残しなんとも呆気なく、あっという間に行ってしまった。本当に、行ってしまった。あの時の言葉を信じなかった自分が酷く愚かに思えて仕方がない。あの時信じていたらこんなに虚無感はなかっただろう。

「馬鹿だよなオイラ…」

気がつくとカーテンの隙間から覗く光も白んでいた。あいつとはもうあれから一通も連絡をとっていない。どこに行ってるかもわからないし、携帯もメールも電話も使用がほとんど皆無なあいつにとっては全く意味を持っていない。(そんな奴からの連絡を待っているオイラもオイラだが)結局何事もいつもと変わらずただ時間だけが過ぎていくんだと思う。淋しい奴だな、と思わず苦笑する。そうだ、せっかくだから久々に友人とでも遊びに行こう。そしたら少しは気が晴れるかもしれない。とりあえず今はもう一度寝ようか、急激に眠気が襲ってきた。


次に目が覚めた時は家に誰かが訪ねて来た時だった。ピンポーンと聞き慣れた音を鳴らしインターホンがそれを知らす。

「…ったく誰だよ」

ただでさえ寝起きが悪いのに突然の訪問となるとこのボサボサの寝癖や至る所に物が置きっぱなしのこの部屋などいろいろ直さなくてはいけないではないか。だが相手を待たすのも悪い。ましてや誰が来ているのかさえまだわからないのだから。少し躊躇った挙げ句、そのまま玄関のドアを開ける。


「…っ!お前!!」
「えへへ、久しぶりだね」
「いつから帰ってたんだよ!?」
「ついさっきだよ」
「じゃあ連絡してくれれば…」
「ううん、ビックリさせようと思ってさ」


「誕生日おめでとう」





「正夢って本当に見るんだな、うん」
「なにが?」
「…なんでもねぇよ」



題:)たとえば僕が


(100505)前拍手文
謎でグダグダなのできました。こんなのだけどデイダラHAPPY BIRTHDAY