病室に入ると、相変わらず彼女は眠っていた。一体いつになったら目が覚めるのだろう。僕も待つのに飽きてきたぞ。それでも僕は待ってやるけど。

「今日は花を持ってきたんだ」

返事が返って来ないことを理解していたが、そう口にする。シャルは何も言わない。こんな時ばかり空気を読むのだから少しだけ苛立った。
真っ白なベッドに沈む彼女。
顔色が悪すぎるんだ、お前は。会うたびにベッドに同化していってるんじゃないかと疑いたくなるほど赤みのない顔色。
そっと手を添えれば肌の冷たさに驚いた。色味のない唇にそっとキスを落として、彼女の長い髪を指に絡める。

「おい、起きろ」

僕が呼べばいつだって花のように笑って飛んで来たお前が、こんなに長く眠り続けていると調子が狂う。だから、早く目を覚ませ。
そしていつものように僕の横で騒がしく笑っていてくれ。

「……っ、ナマエ」

名前を呼んでも返事はない。
シャルも何も言わないし、病院の人間も僕を見ても声は掛けない。
この病室から彼女がいなくなるのも時間の問題で、恐らく明日の朝には病院の人間達は安心して息をつくことだろう。

もう一度ナマエと呼んでみたけれど、彼女は笑わない。僕に名を呼ばれるのが好きだと笑っていた彼女は動かない。もう、二度と。
「…何故、だ」
自分で呟いたけれど、やけに納得してしまった。
当たり前か、彼女は死んでしまったのだから。
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