私が死にたいと零したら、彼は微笑んだ。
普通笑うかと眉をひそめる私に彼はにこりと気持ちが悪くなるような笑みを浮かべて言う。いつもその笑顔ばかり。
「死にたいなんて、生きているから言えることだよ」
諭すように言われたその言葉。
なんだか馬鹿にされたようで少し腹が立った。彼を見ればお決まりの本を開いて読書に勤しんでいて、私の方なんて目線もくれない。それにまた少し苛立った。
「なにそれ」
「人間っていう生き物は、自分が持っていないものを欲しがる傾向があるんだよ。生きているから、死にたい。死んでいるから、生きたいってね」
まるでこの世の全てを知りつくしているかのように彼は話す。彼の口から出てくる言葉は、いつも正しい。正しいのだけれど。
細くて長い綺麗な指がページを捲っていく。しかしその目は何も映していないことを私は知っている。
コンウェイは自分とは全く関係が無い、他人事であるかのようにものを言う。彼にとってはすべての事象が他人事。
そんなことを考えながら私は皮肉混じりに言う。
「まるで、自分が死んでいるみたいに言うのね」
私の言葉に彼はぱちぱちと目を瞬いてから、酷く愉しそうに笑った。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -