恋人同士が愛を確かめあい解け合ったのちの、習慣的なシャワータイム。
アカギはふと自らの肩に目をやる。そこには先の行為の名残――と言っても信じてもらえるかどうか怪しい程に、荒々しい歯形が無数につけられていた。呆れと愛しさの混ざった息を吐いて様々な箇所につけられた歯形を指でなぞる。その中にはやや湯が染みるものもあり、そこそこの強さで噛まれた時を思い出して、痛みと快楽の記憶に肌が粟立った。

アカギの恋人であるカイジは、性行為の際に凄まじい噛み癖を発揮する。
まずカイジは要するに攻め側という形であり、挿入をされる立場ではない。声を我慢するために噛んでいるのではないようだ。
そして別段、サディストであるとか、そういうフェティシズムであるとかでもなさそうだ…やや犬らしさはあるが。アカギと出会って関係を結んだ頃はこのような癖は無かった。しかし行為を重ねるうちに甘噛みをするようになり、それがエスカレートした結果現在のように激しい噛み痕となっていったのである。カイジの激しい抽挿に揺さぶられながら激しく身体を噛まれ、快感と痛みが同時に襲い掛かるあの感覚にも慣れてしまい、寧ろその感覚と噛まれている事実にアカギの興奮は非常に煽られていた。
最早キスマークの代わりのように首もとから肩についたその痕を愛しく思いながら、身体を洗い流していく。毎度、行為の後にもシャワーの後にも、アカギの身体を見て、ばつが悪そうにうなだれながら謝罪を繰り返すカイジを想像しながら蛇口を捻った。

ベッドに戻ると、想像していた通りの様子でカイジが座っていたのでアカギは思わず笑いを漏らした。

「…なんだよ」
「なんでもない」

拗ねたように睨むカイジはぼそぼそとごめんだの痛かったろうだのと呟いた。毎回心配してくれるのならそれなりに加減するとかしろ、とも思うが、どうも欲望と衝動には抗えないらしい。それにアカギも本気でどうにかして欲しい訳でもないので、別に構わない、と言うに留まっている。
それに。
交代でシャワーを浴びに行くカイジの背には、無数の爪痕がつけられていた。

(お互い様だからな)

激しく愛をぶつけ合った痕には、後ろめたさなどどこにもなく。
互いを繋いだ痕として二人の身体に少しの間宿るのだった。
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