玄関で靴を履くアカギの背中を、カイジはじっと見つめた。

「…ほんとに大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫…」

アカギはまた、ギャンブルを求めて街へと出るというのだ。先日の話を聞いたあとであれば、当然カイジは心配する。また男に誘われたりしないだろうか、いやそもそもこんな外見なのだから女も寄ってくるのではないかとカイジの心配は次から次へと生まれては溜まる。アカギの身体能力の高さについて知らないわけではないが、それでもやはり気になるのだ。
靴を履き終わったアカギがゆっくりと立ち上がり、カイジの方を向く。とたんにアカギはくくくと笑った。

「くく…カイジさん、おもしれえ顔してるぜ」
「なっ!お、俺はなぁ!!」

カイジが慌てて口を開いたが、その先はアカギに遮られてしまった。

「わかってるよ、心配してくれてんだろう?」
「……俺、どんな顔してた?」
「娘を嫁に出す時みたいな」

なんだそれ、とカイジは思った。まああながち間違ってはいないかもしれない。
ふ、と間が訪れる。見つめあった二人はどちらからともなく唇を重ねた。はあ、と息を放ちながら唇を離すと、カイジがアカギの額に自分の額をコツンと当てた。

「……」
「なに、寂しいのか?」
「そりゃあな」

今までだって、姿が見えないと落ち着かなかったのに。
カイジはアカギを失いたくなかった。大袈裟なようにも思えるが、それが心からの思いだったのだ。

「俺をここに縛り付けるのは難しいよ」

猫みたいなもんだ、とアカギは言う。

「まあでも、もう野良猫ではないな――帰るところが、あるから」
「アカギ…」
「じゃあ…カイジさん、

行ってくる。」




帰る場所を得た元野良猫は、煙草をふかしながら笑う。
あれじゃあ番犬みてえだな、と。
そんな番犬に惚れた自分もなかなかに面白いものだが、彼の側は心地よいのだから仕方がない。
煙を吐きながら歩く異端の猫は口角を上げたまま、夜の街へと消えていった。
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