粘性を含んだ水音と、ベッドの軋む音と、自分のものではないような高い声。鼓膜を刺激する音はどれも耳を塞ぎたくなるようなものばかりで、頭がくらくらする。特に水音などはひっきりなしに尻から響いており、音にあわせて内部が摩擦され。ぐちゃぐちゃに掻き回されたそこはとうの昔に性器のようなものとなっていた。突き刺さるは恋人の肉棒で、これまたどうしてクズニートにこんなイチモツが備わったのか解らない程。当の本人といえば、本能に突き動かされながら俺を突き動かしている。
「っ…はぁ、カイジさ…、」
乱れがちな呼吸の間に名前を呼べば、本能を押し退けて。ちゃんと動くのを止めて口付けをしてくれるのだ。唇を離すと、小さくリップ音が響く。
「しげる、可愛い」
「…うるさ、」
ああ、油断すればこれだ。
耳を塞ぎたくなるような。
しかし生憎、耳を塞ぐだけの手を持ち合わせていない。
大抵両手は、広い背中を抱き締めているから。既に、使われている。
本気で耳を塞ぎたくば、もう2本の腕が欲しいところだ。
「あ、ぁ、んァ!!」
「しげる、しげるッ」
一段と律動が激しさを増す。水音も軋みも肌がぶつかる音も嬌声も比例して、更に情事中のやや掠れた声で名前をたくさん呼ばれるとなれば、秘部も耳もどこもかしこも熱くなる。満たされる。充たされる。熱くて、熱くて、蕩けてしまいそうで。
気がつけばこちらも、名前を呼んでいた。
お互いにそこに存在していることを確認しあい、主張しあうようにして。─身体はこんなにも深く、繋がっているというのに。
「ぁ、かいじ、さ、ぁあ!!」
「しげる、も、出るっ…」
限界の申告には、背中に爪を立てることで応える。眼前がぶわっと白くなり、尿道を駈け上がった後、腹に白濁が散る。熱い胎内には更に熱い粘液が注がれた感覚があった。この瞬間、全てが充たされる気がして、このときだけ、このとき限定で、ちょっとだけ微笑んでやる。気づかれるとまた、盛りのついたクズニートは調子に乗るだろうが、それもまた一興だ。
口に出しては言わないけど、
愛しい愛しい恋人だから。